イザというときの応急処置!災害時に家族や自分がケガをしたらどうする?(後編・感染予防)



前回に引き続き災害時の応急処置についてです。

前回は緊急時の止血法についてご紹介しました。今回はケガの処置のもう一つのキモ、「感染予防」について書きたいと思います。

「感染予防」とは簡単に言うと傷の中での細菌等の増殖を防ぎ感染を成立させないこと、ということになりますが最も有効な方法はなんだと思いますか?「消毒」でしょうか?

答えは「洗浄」です。おそらく日本で小学校に通った方はケガをしたら水道の水でよく洗いなさい、と教えられたと思いますがこれが非常に大切な感染予防なのです。逆に言うと水の使用を制限された場所での傷の感染予防には非常に難渋することになります。消毒薬を傷口に塗っても一時的に菌を減らすだけで、またすぐに菌が増殖してしまいます。とにかく流水で傷口についている汚れと一緒に菌を”物理的に減らす”ことが重要なのです。しつこいようですが,感染予防のためにはとにかく「洗浄」です。

平常時、病院の救急外来などでは「生理食塩水」と呼ばれる滅菌された体液の組成に近い水が洗浄に使われることが多いです。しかし、日本の水道水は有害な菌が少なく(もちろん無菌ではないが)実際は創部の洗浄は水道水で十分であるという意見もあります。私の個人的な意見として、特に災害時のような場合には水の種類にこだわる必要はないと考えています。もちろん、溜まっている泥水などはよくありませんが、流水であれば物理的に傷の表面の汚れを落とす効果はあると考えられます。私もNGO活動でフィリピンの災害対応に当たった際には飲み水用に持参していたペットボトルの水を患者さんの怪我の洗浄に使いました。

この洗浄は繰り返し行うことが大切です。傷の表面には時間とともに細菌が増殖してきます。可能なら1日2回程度の洗浄を繰り返すのがよいでしょう。

前回の止血法と合わせてシミュレーションしてみましょう。

災害が起こり、何らかの原因で「うで」をケガしてしまった。血が流れている・・・

まずは、慌てず圧迫です。出血しているところを見極めて、できるだけピンポイントで押さえましょう。血がにじんでこないくらいの強さが必要でしたね。しばらく押さえて出血が収まってきたら流水を探して洗浄しましょう。量に制限がなければ最低2リットルくらい洗浄するのがよいと思います。血が止まったら怖がらず、落ち着いてよーく傷を見てみましょう。意外と小さいことも多いものです。あまり深い傷でなければ,災害でパニック状態が予測される病院にあえて行く必要はないでしょう。傷を覆う清潔なものを探して保護しておきます。ただし,泥の中など汚い場所で大きめの傷を負った場合,多くの大人では「破傷風ワクチン」の投与が推奨されますので,落ち着いたところで病院受診を考えましょう。

いつ起こるかわからない災害時,あなたやあなたの大切な人が怪我をしてしまったら・・・。みなさんがパニックにならず落ち着いてできる応急処置の参考となればうれしいです。

(NPO災害人道医療支援会 HuMA 広報ワーキングメンバー/岡山済生会総合病院 救急科医師 稲葉 基高)

※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。