イザというときの応急処置!災害時に家族や自分がケガをしたらどうする?



みなさん、普段怪我をしたらどうしますか?医療が充実した日本では多くの人が病院に行きますよね。では、災害時にケガをしてしまったときにはどうするのがいいのか、考えてみたことはありますか?

大規模災害時には病院(特に災害拠点病院といわれる大病院)は「災害モード」となって平時とは異なる診療体制をとることになっています。より多くの重症救急患者に対応するためです。そのような状況の病院に軽傷の怪我で受診することは決してよい選択とは言えません。ではどうするか?

擦り傷、切り傷など一般的に「ケガ」といわれるものの応急処置の基本は“止血”と“感染予防”。これは全世界どこの病院に行っても同じ(はず)です。今回は緊急時に自分でもできる「止血法」について書きたいと思います。

普段救急外来で働いていてもよく経験しますが、子どもさんが怪我をして血が出ているとみなさん慌てて救急車で来院したりされます。しかし、多くの場合病院に着くころには止まっています。そう、人間の血液には止血作用が備わっていますから、多くのケガからの出血は圧迫で止血可能なのです。この「圧迫」がキーワードです。

傷を押さえるのには抵抗があるかもしれませんが、出血をとめることは重要です。近くにあるキレイめの布などで出血部位を強く押さえましょう。このとき腕や足の全体を押さえるのではなく、出血しているところをできるだけピンポイントで抑えるのが重要です。

使用する布は滅菌ガーゼがあれば一番良いですが、なければハンカチ等でもかまいません。タオルなどあまり分厚くないもののほうが、圧迫力が出血部位にしっかりとかかります。ティッシュはちぎれて傷口に残ってしまうので、他に使用できるものがあれば避けましょう。

押さえる力は「押さえていれば布に血がにじんでこない程度」が適切です。押さえても血がにじんでくるときには押さえる力を強くするか、一度離して血が出ているところを確認してからその場所をピンポイントで押さえてみてください。よっぽど太い動脈が切れていなければ「腕や足の心臓に近い場所を縛る」という処置は不要ですし、不用意に長時間縛ると手足の血流障害を招く恐れもあるので危険です。

例外的に、深い傷で心臓の鼓動に合わせて「ドック、ドック」とリズミカルにたくさんの血が出ている場合には動脈損傷が疑われるため、圧迫+縛ることが有用な場合があります。もちろんこの場合には軽傷ではありませんから、できるだけ早く病院に来てくださいね。災害モードの病院でも優先的に処置すべき状態です。

今回は緊急時の止血法について書きました。実際には「感染予防」の基本である「洗浄」とあわせて行っていくことになります。次回はその感染予防について書きたいと思います。

(NPO災害人道医療支援会 HuMA 広報ワーキングメンバー/岡山済生会総合病院 救急科医師 稲葉 基高)

※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。