バランス投信が抱える自己矛盾とバフェットの投資法


7/14配信のコラムで国内外のリスク性資産に国際分散投資するバランス投信に再びブームが来ているが、国際分散投資のキモである株式や債券などといったリスク性資産の価格変動の方向性、つまり相関が高まっており、市場ショックの前兆かもしれないということについて触れた。今回はバランス投信の考え方の根幹にある国際分散投資が抱える自己矛盾について触れたいと思う。

国際分散投資というのは、日本株、先進国株、新興国株、日本債券、先進国債券、新興国債券、為替、コモディティ、不動産…と国内外のリスク性資産に分散投資することで、長期投資を行う年金基金では常識とされている投資理論のことだ。バランス投信のブームに見られるように、個人の資産運用にも徐々に浸透してきた理論でもある。国際分散投資の前提として、リスク性資産の値動きは異なっており、上昇した資産と下落した資産が相殺され、長期的に価格変動を抑制しながら資産運用ができるとされている。

しかし、世界中の年金基金や機関投資家が国際分散投資をすればするほど妙なことが起きる。年金基金や機関投資家は時価総額の小さい企業や市場流動性のない資産には投資しにくいため、国際分散投資の対象となる資産は大型株など市場流動性の高い資産に似通ってくる。国際分散投資の名の下、年金基金や機関投資家は同じようなリスク性資産を同じように買い、また、同じように売ることになる。

すると資産間の価格変動の方向性が高まり、結果として国際分散投資によって資産間の価格変動の相殺効果が薄くなると考えられる。国際分散投資が普及すればするほど国際分散投資の効果が薄らいでいくというなんとも皮肉な自己矛盾のような状況が起きてしまうのだ。

リスク性資産間の相関が高まるならば、国際分散投資の意味合いはなくなっていく。リスク性資産の違いは変動幅の大小となり、日本株も、米国株も、新興国も、米ドル対円相場も長期的には同じように動くと思われるので、個人レベルでの資産運用において、未知の慣れないリスク性資産に無理して分散投資する必要はない。価格動向やニュースをチェックができ、相場観をもっている、自分の得意とする資産だけに集中して、時にはリスクを取り、時には現金で様子見するといったタイミング投資が望ましいことになる。かの著名投資家ウォーレン・バフェットが行っている投資法がまさにこの投資対象資産を絞ったタイミング投資であり、投資家として実績あるバフェットは国際分散投資をしていないのだ。

(eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎)

※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。