バランス投信ブームはショックの前兆?


とある経済新聞にバランス投信のブーム再来という記事があった。バランス投信とは株式や債券など複数の資産に分散投資する投資信託のことだが、例えば株式が下落しても債券が上昇すれば損失と利益が相殺される、投資初心者の中長期投資に向いているというのがウリ文句となっているのが一般的だ。

しかし分散投資は経済活動がグローバル化する以前に提唱された理論だ。近年においては、現金以外の価格変動のある資産の値動きは似通ってきており、片方が下落しても片方が上昇している、なんてことは起こりにくくなっている。とくにリーマンショックのような経済ショック時には全ての資産が換金売りされて下落する(図1)。こうなると分散投資していても全ての資産が下落するので意味がない。


分散投資の理論のキモは資産間の相関係数にある。相関係数とは価格変動の方向がどれだけ似ているかを表すものであり、数値としては-1から1をとる。-1だと真逆に動く、1だと同方向に動くということだ。分散投資は資産間の相関係数が高まるほど分散投資の効果が薄くなる。

近年の資産間の相関係数はリーマンショックの影響を考慮しても高い水準で推移している(図2)。特に注意したいのが米国株式と先進国債券の相関係数の高まりだ。つまり米国株式も先進国債券も上昇しているということなのだが、これはリーマンショックの前と同じ状況であり、次のショックの前兆といえるかもしれない。ただ、いつ来るかは誰にも分からないが。


バランス投信ブームの再来は要注意だ。そういえばリーマンショックの前もバランス投信ブームがあった。全ての資産が上昇しているからバランス投信の運用成績がよく見えるかもしれないが、分散投資のキモである相関係数は高まっており、市場は危険な状況にあるといえるだろう。資産の全てをバランス投信につぎ込むのはリスクが高すぎる。究極的な分散投資はリスク性資産+現金であり、株式+現金でも、債券+現金でも、コモディティ+現金でも、外貨+現金でもよい。リスク性資産の配分よりもリスク性資産と現金の配分を考えることの方が重要だ。

資産運用において資産を増やすドライバーはリスク性資産への投資だが、それには普段から経済状況や株式、債券、為替市場の動向を見ておく必要があるだろう。バランス投信へのほったらかし投資で資産が増えるなんて美味しい話は無いと思われる。リスク性資産への投資・換金タイミングは自身で判断しないと資産運用は無理。それができないならリスク性資産には投資せず現金にしておく方がよいだろう。

(eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎)

※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。