米国債市場で「逆イールド」が発生!今後の影響は?


米国債市場で「逆イールド」が発生したことが話題となっています。債券市場において、一般に残存期間が長くなるほど金利は高くなります。これが逆転することを「逆イールド」と呼びます。

8月14日の早朝に、米10年物国債の利回りが1.57%へ急落し、一時米2年物国債の利回り(1.60%)を下回りました。14日の取引終了時点では逆転現象は解消されたものの、ほぼ同水準となっています(図1)。


■過去の逆イールド発生局面と今後の影響?

図2は残存10年の米国債利回りを長期金利、残存2年の米国債の利回りを短期金利として、その長期金利と短期金利の差(以下「長短スプレッド」といいます)と株価の推移を見たものです。長短スプレッドがマイナスとなっている、「逆イールド」の時期(赤い部分)がありますが、米国では過去に「逆イールド」が発生した後に株価は大幅な調整局面を迎えています。そのため、「逆イールド」は景気後退のシグナルとも認識されています。


とはいえ、「逆イールド」はあくまで景気後退の〈シグナル〉として認識されているのであって、景気後退の〈原因〉ではありません。また、発生したからといって、すぐに景気後退が訪れるかというとそうではありません。2005年末に「逆イールド」が発生した際には、それから2年近く株価上昇が続いたケースもありました。ただし、その後発生した景気後退(リーマンショック)のダメージの大きさは今さら言うまでもないでしょう。

「逆イールド」発生を受けて14日の米国株式市場は大幅に下落をしました。一説には、「逆イールド」の発生をトリガー(引き金)として売り注文を出すシステムトレードが作動したことが株価急落の原因の一つとも言われています。

米国の景気拡大局面は既に10年を越え、景気後退への警戒感は高まっています。今回の「逆イールド」発生を受けて、来るべき景気後退に向けて株式等のリスク性資産の保有割合を減らす動きが今後見られるかもしれません。

(eワラント証券 投資情報室長 多田 幸大)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。