30日に発表された6月の工作機械受注額(確報値)は約989億円と前年同月比で-39.7%と大幅な下落となりました。受注総額が1,000億円を下回るのは2016年10月以来で、32カ月ぶりの低水準となります。『受注総額1,000億円』は節目と見られていた水準でもあり、それを下回ったことは一部で衝撃を持って受け止められました。
図1は1998年1月からの工作機械受注額とTOPIXの推移です(中国はデータを取得できる2009年6月以降のデータを表示しています)。工作機械受注額は景気の先行指標とも言われていますが、過去を見ると工作機械受注額とTOPIXには相関関係、つまり工作機械受注額と株価は同じ方向に動く傾向がありそうです。
■下落の原因は?
もう少し細かく内訳を見てみると、内需は2018年3月の755億円をピークに、外需は同じく2018年3月の1,073億円をピークに減少傾向にあります。特に外需でもっとも金額が大きかった中国は2017年11月の412億円をピークに減速傾向が強く、2019年6月は115億円と2017年11月と比べて72.1%の減少となっています(現在は米国に次ぐ受注額第2位)。
工作機械受注額が減少しているのは米中貿易摩擦の影響が指摘されています。最大の輸出相手国である米国との貿易問題が深刻化する中で、中国企業や中国向けに輸出を行っている国内外の企業の設備投資需要が減少していることがその要因とされています。米国が鉄鋼、アルミニウム製品への追加関税を発動した2018年3月以降、減少傾向が続いていることからも、米中貿易摩擦が工作機械受注額、ひいては中国経済に与えている負の影響を物語っています。
世界が注目する米中貿易問題は、6月の首脳会談で追加関税の応酬に「一時休戦」することに合意しましたが、8月に入りトランプ米大統領は一転して第4弾となる追加関税を9月1日より発動する意向を示しました。米中貿易問題はますます激化・長期化の様相を呈してきています。
貿易問題の長期化で中国経済の減速が進むとすると、工作機械受注額とTOPIXの相関関係から日本株には売り材料となりそうです。中国での受注額が回復傾向を見せるまで日本株にとっては厳しい局面が続くかもしれません。
(eワラント証券 投資情報室長 多田 幸大)
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