投資家の相場観を映すプット・コールレシオとは?


株式市場は大発会でこそ大きく下落しましたが、その後は大崩れすることなく堅調に推移しています。米中の対立、米国政府閉鎖、英国のEU離脱問題、企業業績の悪化など相場には依然として不透明感があることから投資家は株式相場に対して悲観的に見ているようです。

投資家の相場観を客観的に見ることができる指標があります。プット・コールレシオという指標です。プット・コールレシオとは、オプションやeワラント(カバードワラント)の取引で売る権利を意味するプットと買う権利を意味するコールの取引量を指標にしたものです。一般的に相場に弱気な投資家は相場下落時に価格が上昇するプットを、強気な投資家は相場上昇時に価格が上昇するコールを購入します。プット・コールレシオはプットの取引量をコールの取引量で割ったもので、プット・コールレシオが高い=プットを買う投資家が多い=弱気な投資家が多い、プット・コールレシオが低い=コールを買う投資家が多い=強気な投資家が多い、ということになります。


この図は日経平均株価とeワラント証券が日々公表しているプット・コールレシオです。(最新データはhttps://www.ewarrant.co.jp/tools/put-call-ratio/)。図から分かるように、日経平均株価とプットコール・レシオは逆の動きをする傾向があります。つまり、プット・コールレシオがピークをつける、つまり相場に対して弱気の見方をする投資家が大勢となると、相場の底打ちのシグナルとなり、プット・コールレシオが極端に下がる、つまり相場に対して強気の見方をする投資家が大勢となると、相場の天井のシグナルとなるようです。

年末にかけてプット・コールレシオは上昇しました。相場の先行きについて弱気な見方をする投資家によってプット型eワラントの取引が活発に行われたためです。その後プット・コールレシオは1月4日にピークをつけて低下しており、日経平均株価も上昇に転じています。

プット・コールレシオはeワラントを対象とするものだけでなく、取引所オプションを対象として計算することもできます。しかし、取引所オプションにおいて投資家は、オプションの売り手となることができるため、同じオプションの取引でも買い手と売り手では投資家の相場観は異なっています。例えばコールオプションを買う投資家は原資産に強気の相場観を持っていますが、コールオプションを売る投資家は強気の相場観を持っていません。コールオプションの売買が増えることはコールオプションの買い手だけでなくコールオプションの売り手も増えていることになり、コールオプションの取引参加者のビューは強気、弱気ともに同数です。一方、eワラントはオプションの買いポジションのみを有価証券化したものですので、投資家は常に買い手となり、取引に応じるマーケット・メーカーは常に売り手となります。マーケット・メーカーは独自の相場観を持つことはありませんので、eワラントを対象としたプット・コールレシオは投資家の相場観をより反映していると言えます。

プット・コールレシオは投資家の心理状態を把握できるという点で、過去の取引価格を観察するタイプのチャート分析よりダマシは少ないと思われますが、プット・コールレシオを用いた投資手法が成功するとは限りません。あくまで投資は自己責任でお願いします。

(eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。