利回りから見ると米国株の投資魅力度は低い


米国景気の状況や株価の今後を考える上で長期金利と短期金利の差、いわゆる長短スプレッドが注目されるようになりましたが、株式の投資魅力度を測る上で代表的かつシンプルな指標は配当利回りでしょう。最近のNYダウ平均株価の配当利回りを見ると、米国株の投資魅力度は低くなってきています。

図は短期金利の参考指標として2年物の米国債利回り、長期金利の参考指標として10年物の米国債利回り、さらにNYダウ平均株価の配当利回りの推移を示したものです。長期金利と短期金利の差、長短スプレッドは2018年7月末時点で0.295%となっています。長短スプレッドが注目されるのは長短スプレッドがマイナス、つまり長期金利よりも短期金利が高くなっている「逆イールド」(枠で囲った部分)が発生すると、米国株がピークアウトしていたからです。


2018年7月末の時点ではまだ「逆イールド」は発生していませんが、発生は時間の問題でしょう。最近になってもっと注目しておきたいのはNYダウ平均株価の配当利回りより短期金利の方が高いことです。NYダウ平均株価の7月末時点の配当利回りは2.259%、ちなみに別の代表的な株価指数、S&P500指数の7月末時点の配当利回りは2.366%と、いずれも短期金利の2.669%を下回っています。

機関投資家は投資対象を選定するにあたり、リスク当たりのリターンを最大化することを考えるのが一般的です。ここで言うリスクとは価格変動、ボラティリティです。2年物の米国債と株式(指数)を比べれば価格変動リスクが高いのは株式の方です。その代わり、長期投資を前提にすると株式のキャピタルゲインは米国債よりも大きくなりますが、長短スプレッドの動向を加味して目先1年の投資方針を考えた場合、保守的にキャピタルゲインをゼロと見積もって考える機関投資家もいるかもしれません。この場合、リターンは利回りの高さで比較する異なりますので、リスク当たりのリターンで見れば株式ではなく2年物の米国債を選択する、ということになります(株式の期待リターンは米国債の利回りに株式リスクプレミアムを加えたものだ、と考えるならば別の議論になりますが、これは目先1年の話です)。

ざっくり言えば価格変動リスクが相対的に小さい2年物の米国債の方が株価指数より利回りが高いから、長短スプレッドで見てピーク感のある株式の投資比率を今あえて上げる必要はないよね、という判断をする機関投資家がいても不自然ではない状況にあるということです。

(eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。