日米欧を中心とする中央銀行による資産買い入れ、いわゆる量的緩和政策によって株式市場は上昇してきましたが、量的緩和という薬の効果は時間が経過すると薄まってしまうようです。
図1は米国の中央銀行に当たる連邦準備制度(Fed)、日本銀行、欧州中央銀行(ECB)の資産残高を円換算して合計し、その推移を見たものです。2018年7月19日時点でFedが約485兆円、日本銀行が約540兆円、ECBが約603兆円、合計約1,628兆円という規模です。なお、FedとECBの資産額は上下に振れていますが、これは為替レートの変動によるものです。
日米欧の中央銀行の資産残高の合計と日経平均株価の関係を見れば、「緩和は買い」ということが分かりますが、資産残高があまり増加しなかった時期、図中の四角で囲っている時期の日経平均株価は冴えない動きになっています。追加緩和という薬は時間が経過すると効果が薄まってしまうのかもしれません。
また、四角で囲っている時期の後、株価が戻った局面の資産残高を見てみると、株安になる前の資産残高よりも大きくなっていることが分かります。この傾向は資産残高が急拡大した2013年以降に顕著です。追加緩和という薬を更に投与したことで株安を乗り切ってきたように見えます。
こうしてみると、株式市場は追加緩和という薬に依存してきたのかもしれません。現在の状況は量的緩和という薬をすでに大量に投与された状況です。このような状況下で薬の投与量が減らされたらどうなってしまうのでしょう。Fedは保有資産の縮小を進めていますし、ECBも続けてきた資産買い入れを今年から減額する方針を示しています。米欧では経済が健康になってきたから薬の投与量を減らしていこう、という方針です。この病み上がりの状況で今後、大きな○○ショックと言う株安の病気が発生したとき、追加投与できる薬が限られている、または追加投与できないとすれば、株安前の水準に戻すのは困難なことになるかもしれません。
(eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎)
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