<九州電力の揚水発電> 太陽光発電の激増で大赤字・・・


9月26日付け日本経済新聞ネット記事では、九州電力の小丸川揚水発電所(宮崎県木城町)について報じている。


<記事要旨>
・小丸川発電所の最大出力は120万キロワット、一般家庭約40万軒分。
・揚水発電所はもともと、原子力や地熱といった昼夜問わず出力が一定の発電所の夜間電力分をため、需要が多い昼間に発電してきた。
・近年、九州で太陽光発電所が増え、太陽光の出力が増える昼間に電力量が余るように。
・昼間の余剰時にためて夜間に使うため、昼間の揚水が増えた。

日本では、夏の昼間にはエアコンや屋内照明での電力消費が多く、夜は電力消費が少なくなるので、夜間では原子力発電所や火力発電所に余力が発生する。

それら余力による電力を利用して、揚水発電所の下部貯水池から上部貯水池に発電用水を汲み上げ、再び昼間の発電に使う。

これが揚水発電の元来の趣旨と仕組み。小丸川発電所の概要については、九電HPを参照されたい。

九電管内では近年、太陽光発電設備が急増し、太陽光発電量が増える昼間に電力が余るようになってきたため、昼間の揚水が増えている。

自社電源である原子力発電所や火力発電所の『余力』を使って揚水しているのでなく、他社電源である太陽光発電所の『余剰』を使って揚水しているわけだ。

実はこれ、経営上の利益が全くないどころか、揚水発電所単体で見ると、恐らくかなりの大赤字になっているはず。

これは一般的には、上場企業の株主利益に反する話。経済産業省は、これを看過するのか?

昨年以来、電力小売全面自由化法が施行されてはいる。だが実際には、電気事業の多くの部分はガチガチの規制の下にある。

再生可能エネルギーに関しても、再エネ発電事業への参入は一応自由っぽいが、再エネ電気の引取りや買取りには固定価格買取制度(FIT)のような強烈な規制が敷かれたまま。

電源が、再エネ(太陽光発電、風力発電、水力発電、地熱発電、バイオマス発電)であろうと、化石燃料(火力発電)であろうと、核燃料(原子力発電)であろうと、電力政策の肝は安価安定供給システム持続とエネルギー安全保障。

これを再エネ振興と両立させていくには、再エネ電源を送配電網運営者である大手電力会社に集約する再編を誘導する以外に、妙案を思い付かない。そのためのFIT法改正が必要だ。

(NPO法人社会保障経済研究所代表 石川 和男 Twitter@kazuo_ishikawa