2010年にUXデザインという言葉が生まれ、多くの人がその意味と重要性を定義しました。概ねUXデザインとは「モノではなくコト(体験)を意識して考えること」を意味します。この意味が認知されると次に、コトを意識して考えるための手法を多くの人が主張しました。独自の手法を元にUXデザインのコンサルをする会社がいくつも現れました。
その次、まさに2017年現在はというと、すでに多くの人が様々な手法を使いたくさんのUXデザインをしています。その中からあることが分かってきました。同じ手法で同じインプットであっても考える人によって、まったく異なるコトを発想するのです。より良いコトを生み出す人、さほどたいしたことのないコトを生み出す人、この品質のバラつきの原因は何でしょうか。それは「感性」なのです。良いコトを生み出す人はユーザの心理に深く同調できたり、楽しさ嬉しさの解像度が高かったりと、同じ手法やインプットでもそこから感じ取れる情報量が多く、何をすれば人がどうなるのかを見極める感性(センス)があるのです。当然ですが顧客も会社もより良いコトを欲しているのであって、さほどたいしたことのないコトは誰も求めていません。
つまり現在は、コトを意識するのは当たり前、手法が使えるのも当たり前。その上で”高い品質”のコトを生み出すことだけを「UXデザイン」と呼び、それができる感性を持ち合わせた人を「UXデザイナー」と呼ぶのです。これはプロダクトデザイナーと同じですね。モノのカタチは誰にでも提案できます。しかしそれをデザインとは言わないですよね。ただ単にカタチを主張するのではなく造形美や機能美を突き詰めた感性的に高い品質のカタチを提案することだけをプロダクトデザインと呼び、それができる人たちをプロダクトデザイナーと呼んでいます。
UXデザインは多くの実践がなされ成熟段階に入ったことで、2017年現在になってようやくデザインという単語を使うだけの意味がある再定義ができるようになったのです。
(Betonacox Design)