日本銀行はすでに出口戦略を始めている?


米連邦準備制度理事会(FRB)は6月にも追加利上げをすると見られているほか、保有資産の縮小計画まで検討しています。それにも関わらず日本銀行は量的・質的金融緩和の出口を示していない、という意見も見受けられますが、日本銀行は既に出口戦略を実行しているのかもしれません。

昨年9月の金融政策決定会合にて、日本銀行は「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の導入を決定しましたが、量から金利に目標を変えていることから、緩和政策の出口戦略またはその布石と見る市場参加者もいました。

今年に入っても、日本銀行が保有する国債残高は減ることなく、増加基調が続いています。4月末時点で日本銀行が貸借対照表に資産計上した国債の残高は424.6兆円にまで膨らみ、一見すると出口戦略には程遠いという印象です。しかし、国債残高の変化率を見るとちょっと状況は異なってきます(図1)。

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図1にあるように2014年の後半以降、国債残高の増加率は低下傾向にあります。日本銀行は明確に出口戦略に言及したわけではありません。これは保有残高が膨らんだことが原因です。国債を一定額で買い続けていれば、当初は新規買付額が保有残高全体に占める比率は大きくなりますが、保有残高が積み上がるほど買付けが変わらなければ変化率は小さくなります。

量的緩和という薬の効果はやればやるほど小さくなっていくわけで、その限界は近いと言えるでしょう。日本銀行は薬の効果が薄くなっていることを認識し、次の景気後退期に備えて金融政策の手段を確保する必要性を考えているかもしれません。日本銀行は誘導目標を量から金利に変えたことで、多少の国債購入の減額があることを市場に織り込ませました。インパクトのある大きな購入減額ではなく、過去に購入した国債が順次償還されることで保有する国債残高を減らすという、ゆっくりとした出口戦略を実行しているのかもしれません。国債残高の変化率は0%に近づいていくことでしょう。

もし国債残高の変化率が0%に近づく、又はマイナスとなると何がおきるのでしょうか?直近では2006年2月末には変化率がマイナスとなりました(図2)。その後の日本株相場はピークを付けて反落しています。量的緩和によって2013年以降日本株相場は上昇しましたので、その逆になることが予想されます。ただし、2007年は米国のサブプライムローン問題、2008年はリーマンブラザーズの破綻があったので2006年以降の下落は海外要因による株安と言えますが、現在の日本株の水準はピークに近いということは意識しておいたほうが良いかもしれません。

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(eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。