『海沿いの坂のある街カターニア』“世界遺産・クロチフェリ通り” Via dei Crociferi in Catania,Sicily



画像のこの「クロチフェリ通りVia dei Crociferi」は、今までに数本のイタリア映画の舞台となっているのですが、その訳は18世紀のもっとも重要なカターニア・バロック様式の建造物が軒を連ねるようにして建ち並んでいるからです。

《註:クロチフェリというのは十字架に磔の人という意味を持ちます》

溶岩のグレーがかった黒い資材と白い透き通るような清新さを誇る大理石が華麗に絡まったカターニア・バロック様式。その見事な景観は映画の格好の舞台となったのはもちろんですが、私たち観光客にとっても通りは、世界遺産に登録された必見のポイントでもあり、ロマンあふれる情景を満喫できる通りでもあるのです。

通りは街が誇って造ったサン・フランチェスコ広場から始まります。秀麗で幻想的でもある素晴らしいバロック一色の世界が広場から始まるのです。

広場から通りに入ると、まずは1777年に完成した聖ベネディクト教会が私たちを迎えてくれます。次に1704年から数年掛けて完成したサン・フランチェスコ・ボルジア教会、そして、イエスズ会建物の妖艶な外観に目が止まると、その前には通りの主役とも言うべきサン・ジュリアーノ教会が建っています。

この教会は1739年から12年の歳月を掛けて完成したジョヴァンニ·バッティスタ·ヴァカッリーニの最高傑作といわれるもので、隣接して建つクロチフェリ修道院(1780年完成)とサン・カミッロ教会(1720年代に創建されたヴァカッリーニの作品です)と共に、通りを華やかに彩り、訪れし者を魅了します。僅か200㍍ほどのクロチフェリ通り。そこにはこのようなカターニアが誇るバロック様式の建造物が軒を連ねるのです。

なかでも注目したいのは、先程も触れましたが、このカターニアを舞台にして活躍した建築家ジョヴァンニ·バッティスタ·ヴァカッリーニの傑作と言われる「サン・ジュリアーノ教会St.Giuliano」です。教会は1760年の作品でカターニア・バロックの典型的な形態を有し、その華麗さを見事な手法で表現した傑作とされています。絢爛たる豪華な内装を自慢とする内部も見応え充分です。また、通りとアントニーノ・ディ・サンジュリアーノ通りとの十字路に建つクロチフェリ修道院も彼の作品ですが、カターニア・バロック様式の秀麗な外観に誰もが注目し、立ち止まります。

その他、通りの半ば辺りに建つサン・ベネディット教会は、1703年から10年の歳月を掛けて完成したもので、カターニア・バロック様式の外観はもちろんですが、精緻な彫刻を施した木製の扉口と大理石やスタッコ細工で飾られた内部は一見の価値があります。

通りはジョヴァンニ·バッティスタ·ヴァカッリーニの傑作集と言ってもいいほどに、彼の素晴らしい作品が軒を連ねます。映画の舞台になってその名を知られるようになった通りですが、人の訪れは少なく、ライトアップされた夕刻時には憂いある情景を見せるのです。そして、訪れし者を夢の世界へ誘(いざな)います。

ここはカターニアの街の必須のポイントであり、知る人ぞ知るポイントです。

なお、通りに建つイエスズ会の建物は現在は美術学校、サン・カミッロ教会近くのチェラミの公爵の屋敷は現在カターニア大学の法学部として開放されています。

《余談: ドォーモ広場からエトネア通りを少し北にいったところにある大学広場Piazza Universitaには、左右にバッカリーニ設計のバロック建築が建っていますが、広場東側が貴族の元邸宅のサン・ジュリアーノ宮殿で、西側がカターニア大学です。カターニア大学は、1434年アラゴン家のアルフォンソ5世により創設されたシチリアで一番古い大学です》

《註:文中の歴史や年代などは各街の観光局サイト、取材時に入手したその他の資料、ウィキペディアなど参考にさせて頂いています》

(トラベルライター、作家 市川 昭子)