不確実性による市場の急変動はまだ織り込まれていない


トランプ政権がオバマケア代替法案の採決を撤回してから、米国の経済政策の不確実性がいっそう高まってきた感があります。経済政策の不確実性を指数化した経済政策不確実性指数(Economic Policy Uncertainty Index)という指数で見ると不確実性は高水準にありますが、一方で株式市場の予想変動性を示すVIX(ヴィックス)は低水準にあり、不確実性に伴う市場の変動拡大はまだ織り込まれていないかもしれません。

経済政策不確実性指数とはスコット・R・ベーカー(ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院准教授)、ニック・ブルーム(スタンフォード大学教授)、スティーブン・J・デイヴィス(シカゴ大学ブース経営大学院教授)が開発した指数で、主要な新聞から経済政策の不確実性に関する記事の数などから経済政策の不確実性を測定したものです。VIX(ヴィックス)とは、シカゴ・オプション取引所がS&P500指数を対象とするオプション価格をもとに算出している予想変動率(ボラティリティ)に関する指数であり、株式市場の下落時に上昇する傾向があることから日本では恐怖指数と呼ばれることもあります。

図にあるように過去においては経済政策不確実性指数とVIXの上昇がほぼ同時期に起きていました。しかし、トランプ氏が大統領選挙で勝利してから経済政策不確実性指数は上昇傾向にあるものの、VIXは低下傾向にあります。4月に入ってからようやくVIXが上昇傾向を示していますが、過去の水準と比較するとまだまだ低く、市場にはVIXの上昇、つまり市場の変動拡大が織り込まれていないと考えられます。

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経済政策に加えて外交政策でも不確実性が高まっている現在の状況において、不確実性の低下は想定しにくく、むしろ今後VIXが上昇することを想定したほうが現実的かもしれません。VIXの上昇は株価の一段安を伴う可能性が高く、日本株にも影響が出てくるものと考えられます。4月13日時点のVIXは15.96でした。筆者の分析では目安としてVIXが20を超えている時期の日経平均株価は下落する傾向が強い結果となっていました。

投資に活かすのであればVIXの上昇を見込み、日経平均株価を対象としたベア型のETFの買い、上場オプションのプット買い、プット型eワラントの買いなどを検討します。特にプット型eワラントであれば、上場オプションではなかなか買うことができない満期までの期間が長い銘柄や、権利行使価格が高い銘柄を買うことができます。このような銘柄は、日経平均株価の下落に備えるほかに、日経平均株価の予想変動率の上昇も価格の上昇にプラスに寄与するかもしれない、という点で検討の余地がありそうです。

(eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。