あのサブプライム問題が自動車ローンで再燃するかも?


米ニューヨーク連銀によると、米国の家計債務は増加傾向にあり、2016年第4四半期(2016年末)の債務残高は以前のピークであった2008年第3四半期の12.68兆ドルをわずかに下回る12.58兆ドルでした。2016年第4四半期の内訳を見ると住宅ローンが67%、学生ローンが10%、自動車ローンが9%です。住宅ローンの比率が一番大きいのは従来どおりですが、その他のローンとして学生ローンと自動車ローンの増加が目立っています。

2008年の金融危機は2007年から2008年に表面化したサブプライムローン問題が火種になったと考えられます。サブプライムローンとは債務返済能力の低い層(サブプライム)向けのローンのことです。ニューヨーク連銀の直近の資料によりますと、2008年の金融危機以前はサブプライム向け住宅ローンの残高は最大2,000億ドルほどありましたが、金融危機を契機に貸し出しが抑制されて直近では500億ドル程度となっています。しかしながら、自動車ローンについてはサブプライム向けの残高が拡大傾向にあり、直近では金融危機以前とほぼ同水準の400~600億ドル程度となっています。

自動車ローンについては延滞率の上昇が懸念事項となりそうな雰囲気です。ニューヨーク連銀のホームページ(https://www.newyorkfed.org/microeconomics/hhdc.html)によると90日以上の延滞が残高の3.8%となり、まだ水準としては低いですが上昇傾向となっています。延滞率が上昇しているのは、返済能力が低いサブプライム層による自動車ローンの利用及び残高の拡大によるものでしょう。サブプライム層が自動車ローンを組んで自動車を購入しているということになりますが、米国の景気拡大傾向が続いていることや販売店のプッシュもあるのかもしれません。最近、日本車メーカーが米国の販売において販売店に支払う販売奨励金を積み増しているという報道がありました。裏を返せば販売奨励金を積み増したり、延滞リスクのあるサブプライム層に系列会社から融資して販売せざるを得ないほどの販売不振が発生しているものと考えられます。図は米国新車販売台数の推移ですが、直近は2016年12月にピークをつけています。

※画像をクリックして拡大

現在のサブプライム向けの住宅ローン残高と自動車ローン残高を合わせても1,000億ドル前後でしょうから、金融危機前の住宅ローンだけで2,000億ドルという規模に比べれば大きなインパクトにはならないかもしれません。しかしながら、ローンの借り手にとっては影響の大きい金利は長期、短期共に上昇の可能性が高まっています。自動車ローンの残高増加と延滞率の上昇は次のサブプライムローン問題の火種になるかもしれません。バブル崩壊となると自動車業界にとっては販売面への影響も大きいでしょうし、自動車部品メーカーにも影響がある問題であり、表面化するのはまだ先のことでしょうが注視しておいたほが良さそうです。

(eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。