イタリアの政局リスクはこれからが本番


昨年12月に実施されたイタリアの憲法改正に関する国民投票は否決となり、当時首相であったレンツィ氏は首相を辞任する結果となりました。イタリアでの政治改革や反EUを唱える野党勢力の拡大が懸念されていましたが、米国でトランプ氏が大統領選挙に勝利してから株価の力強い上昇が発生したことで、市場のイタリアに関する関心は薄れたように思われます。

しかし、株高でイタリアの諸問題が解決したわけではなく、一時的に覆い隠された状態と言えるでしょう。今注目すべき問題は次の総選挙でどこの政党が与党になるかという点です。イタリアの総選挙は来年に予定されていますが、レンツィ前首相が前倒し選挙について言及するなど、年内の実施観測も出てきており、国民投票で注目を浴びたイタリアが再び注目されるかもしれません。特に今年はフランスやドイツなどでも総選挙が行われることもあり、市場の懸念材料に加わりそうです。直近のイタリア主要政党の支持率は図1の通りです。12月の国民投票以降も与党民主党(PD)は支持率で第1党を維持しているのに対し、反EUの急先鋒の五つ星運動(M5S)の支持率は低下傾向にあります。

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とはいえ、政党が数多くあるイタリアにおいて単独で政権を取るのは難しいと考えられますので、現実的には連立政権となるでしょう。現在考えられるシナリオのうち、筆者が有力と考えるシナリオは次の2つです。

シナリオ1:独立路線を採る5つ星運動(M5S)がどことも組まず、ベルルスコーニ元首相が率いるフォルツァ・イタリア(FI)が野党側に付き三つ巴となる。

このシナリオでは与党連合にイタリア左派・環境・自由(SI-SEL)が付く想定ですが、この場合、フォルツァ・イタリア(FI)は保守政党なので左派連合の与党とは組まず、野党連合に付くだろうという見立てです。各勢力の支持率は拮抗しており、どの勢力も過半数を取れないという状況が考えられえます。

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シナリオ2:5つ星運動(M5S)が野党連合に回り、与党は対抗してフォルツァ・イタリア(FI)を与党側に引き込む。 このシナリオでは5つ星運動(M5S)が方針転換をして野党側に付くことになります。野党が圧倒的な勢力となりますが、これに与党が対抗するには左派連合は諦めてフォルツァ・イタリア(FI)を与党側に引き込み、政治経験や実績で野党連動に対抗していくことになるでしょう。このシナリオでも支持率は拮抗していますが、与党がフォルツァ・イタリア(FI)と組することができるのかがポイントとなるでしょう。

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まとめると、イタリアの総選挙イベントにおいて注視すべきは選挙日程に加えて、5つ星運動(M5S)が独立路線を歩むのか、それともどこかの政党と共闘するのかという点が1つ、5つ星運動(M5S)が野党連合を選択した場合に与党連合に勝ち目があるのかと言う点です。仮に5つ星運動(M5S)が政権を取ることになれば英国に続いてイタリアにおいてもEU離脱が現実味を帯びてくることになり、ユーロ相場やイタリア国債、イタリア銀行株の下落など金融市場に大きな混乱を招くものと考えられます。

(eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。