世界エネルギー機関(IEA)が先月発表した“ Key World Energy Statistics 2016 ”には、2014年における世界のエネルギー動向を示す有用なデータが数多く掲載されている。ここでは、それらのうちの幾つかを見てみよう。
一次エネルギー供給の推移〔資料1〕と電力供給の推移〔資料2〕を見ると、世界全体ではエネルギー需要が拡大していることもあって、供給量ベースでは、石炭推進、石油推進、天然ガス推進、原子力推進、水力・再エネ推進である。
<資料1:一次エネルギー供給の推移>
![](https://2.bp.blogspot.com/-2DowL0jChLU/WBCz1gngVqI/AAAAAAAAM68/poXUwhTsACUupuWeoBRJipp6gO13RyEAACPcB/s1600/20161027column1.png)
<資料2:電力供給の推移>
![](https://3.bp.blogspot.com/-4y-uCii7PYw/WBCz1iSmWzI/AAAAAAAAM68/B_v9ZpV4lhcO8ETp6YPEcqshp3kKKmN5gCPcB/s1600/20161027column2.png)
水力以外の再エネは、“ others ”と一括りになっている。水力以外の再生可能エネルギーである地熱・太陽光・風力などについては、それぞれ単体があまりにも小さいからであろうか、ここには個別の統計は掲載されてない。
そこで、再エネ発電では単独で圧倒的シェアを占める水力について見てみると〔資料3〕、日本は発電量で世界8位(設備容量では世界6位)になっている。
<資料3:水力発電量の国別順位>
![](https://4.bp.blogspot.com/-LGDjRacll8s/WBCz1mt2otI/AAAAAAAAM68/xcqQJ7iJpwAGDjyJhOIPd3c1K7c2UQfrwCPcB/s1600/20161027column3.png)
“脱原子力”の先進国として日本でもしばしば賞賛報道がなされるドイツは、原子力で世界7位の原子力発電量となっている〔資料4〕。日本が参考にすべきは、「“脱原子力”を宣言しているドイツ」ではなく、「“脱原子力”を宣言していながら実は“脱原子力”を未だ実現していないドイツ」の狡猾さである。
<資料4:原子力発電量の国別順位>
![](https://2.bp.blogspot.com/-_4m0ZXEg4Ag/WBCz1lX0qGI/AAAAAAAAM68/vPJhA9j0xaE22ovTFk0B4MJ92b0VYMpHwCPcB/s1600/20161027column4.png)
最後に、化石燃料発電について見ておこう。原子力発電の正常化がまだまだ遠いと思われる日本は、石炭火力発電で世界4位、石油火力発電で世界2位、天然ガス発電で世界3位となっている〔資料5〕。即ち、日本は今や、化石燃料発電大国なのである。
<資料5:化石燃料発電量の国別順位>
![](https://2.bp.blogspot.com/-mxxPGi8_edw/WBCz1j71c5I/AAAAAAAAM68/hSW8CBUWQx4XrUypSsKSnfWFW2bkDt5UACPcB/s1600/20161027column5.png)
日本は、この状態から早急に脱却する必要がある。そのためには、商用可能な再エネ蓄電技術が開発されるまでの間は、一定程度は原子力発電に依存せざるを得ない。
原子力発電の早期正常化のためには、原子力規制委員会による新規制基準に適切な猶予期間を設定し、新規制基準適合性の審査中であっても原子力発電再開を容認していくよう直ちに運用改善で対応すべきだ。
(NPO法人社会保障経済研究所代表 石川 和男 Twitter@kazuo_ishikawa)