米国大統領選よりも議会選の結果に注目


米国大統領選に関して全3回のテレビ討論会が終了し、全ての回においてクリントン氏が優勢であったことが報じられています。クリントン氏の当選の可能性は高いでしょう。仮にクリントン氏が大統領になったとして、その政策を実行できるかがカギとなるわけですが、それは同日に行われる議会選挙の結果がポイントとなります。 現在のオバマ政権はオバマ大統領が民主党に属するのに対して、上院も下院も共和党が多数派で、いわゆるねじれ状態にあります。ねじれ状態になると議案の進捗が滞るなど政治の停滞を招くことになります。議会選挙の結果、クリントン氏の属する民主党が多数派となることができるかがポイントです。

上院の議席数は100、下院の議席数は435です。上院の任期は6年で2年ごとに1/3が改選されます。今回の改選議席は34で、民主党の10議席、共和党の24議席が対象です。仮に改選34議席を民主党と共和党で半分に分けた場合、改選後の上院は民主党が51議席、共和党が47議席となりますが、この場合は民主党は7議席増えることになるので、民主党にとっては楽観的すぎる見通しかもしれません。改選議席数が多い共和党が若干議席を減らすとしても、上院の選挙結果は民主党と共和党の議席数が均衡する可能性が高いと考えられます。


一方で下院の任期は2年で全議席が改選されます。大統領選と下院の選挙が同じ年の場合、大統領の属する党が下院でも多数派となる傾向が高く、仮にクリントン氏が勝利となれば下院で民主党が議席を伸ばす可能性があります。しかし、現状の民主党の議席数は共和党より大幅に少ないことに加え、トランプ氏のスキャンダル等にも関わらずクリントン氏とトランプ氏の支持率の差が大きくなっていないため、クリントン氏が大差をつけてトランプ氏に勝利しない限り、下院での共和党優勢の状況は変わらないかもしれません。

以上のことから大統領選挙はクリントン氏勝利、上院は均衡、下院は共和党が多数派というねじれ状態になる可能性が高いと個人的には思います。予算の先議権を持つ下院が共和党となることで各種政策の実行性に問題が生じる可能性があり、短期的に米ドルの下落が発生するかもしれません。とはいえ、米国建設・土木関連セクターについては共和党もインフラ改善を重要視しているので上昇を期待できそうです。また、米国軍事関連セクターもオバマ外交への批判からタカ派が優勢となると思われ、上昇を期待できそうです。一方で、米国製薬セクターはクリントン氏だけでなく共和党も高額医薬品に批判的で弱含むかもしれません。日本株全体としては円高と製薬株の下落懸念に加えて、12月のFOMCにおける利上げが強く意識されて若干の弱含みとなるかもしれません。米ドル対相場は一旦円高に向かうも米国の利上げにより値を戻すと予想します。

(eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎)

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