財務省が9月8日に発表した7月の国際収支状況(速報)によると、訪日外国人旅行者の増加で旅行収支は1996年以降で過去最高の3250億円でした。旅行収支は訪日外国人による消費を反映するものですので、海外から来た観光客がそれだけ日本にお金を落としてくれたことになります。
その一方で、三越伊勢丹ホールディングスは三越千葉店の営業を2017年3月に終了すると発表しました。数年前は訪日外国人の高額品の買い物で潤った百貨店の状況は芳しくありません。この要因の一つとしては中国政府が中国外で購入した商品に課す関税を引き上げたことが挙げられます。中国人観光客が日本で大量の買い物をする「爆買い」にストップをかけたのです。加えて為替相場で円高が進行したことも影響しているかもしれません。
旅行収支は過去最高なのですから、訪日外国人の消費が高額品の買い物から別のものに移行したわけです。観光庁の資料によると消費の比率が高いのは宿泊料金、飲食費、買物代ですが、昨年と比較して金額が増えたものは宿泊料金、飲食費、交通費、娯楽サービス費であり、買物代は減少しています。宿泊料金と飲食費の増加は観光客の増加に比例するでしょうが、観光客が増えたのに買物代が増えていないのは、買物代の単価が下がったことを意味します。
訪日外国人の購入率が高いのは菓子類やその他食料品・飲料・酒・タバコだそうで、化粧品や医薬品、トイレタリーなども人気があるようです。また、日本に来る外国人が最も期待していることは日本食を食べることだそうで、かつてのように高額品の買い漁る「爆買い」は異常であり、正常な状態に戻ってきたという解釈もできそうです。
訪日外国人に評価の高い食事は寿司が定番ですが、ラーメンや肉・魚料理も人気が高いようです。評価の高い飲食店を運営する会社は上場していないことが多く、またサッポロライオンのように訪日外国人を取り込んでいても、親会社のサッポロホールディングス(2501)における外食部門の売上は本業の酒類に比較して小さいという場合もあります。とはいえ、カルビー(2229)、花王(4452)、資生堂(4911)、コーセー(4922)などはインバウンド需要の恩恵を受けそうです。
(eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎)
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