世界中の金融関係者、投資家が注目した米連邦準備制度理事会(FRB)は21日、連邦公開市場委員会(FOMC)において政策金利の据え置きを決定しました。これを受けて米国株は上昇し、米ドルは下落しました。米ドル対円相場は100円近くまで円高が進みましたが、22日には祝日にもかかわらず財務省、金融庁、日銀が臨時会合を持ち、投機的な動きがあれば必要な対応を取るとけん制したことから円高の進行がいったん止まったように思われます。
今年の前半においては米国の政策金利は今年中に複数回利上げがあるものと見られていました。しかしながら、結局今年はいまだ決定されず、今回の9月のFOMCでも見送られ、今年のFOMCは残すところ11月と12月のみとなりました。図1は金利先物取引に織り込まれているFOMCにおける米国の政策金利の予想です。政策金利は現行0.25~0.50%ですので、金融市場において11月のFOMCで0.50~0.75%となる、つまり利上げがある確率は12.4%と予想されています。11月は米国の大統領選が行われますが、利上げは企業の借入金利の上昇や米ドル高をもたらし産業界にマイナスの影響となることが予想されます。ゆえに11月は選挙を考慮して実施されないだろう、というのが市場の大方の見方です。となると12月のFOMCで利上げが決定されるのか?がポイントになりますが、市場の予想は51.9%であり完全に利上げを織り込んでいないようです。
一方で政策金利を決めるFOMCの参加メンバーの将来の金利予想はどうなっているかというと、図2にありますように2016年末には0.625%が予想の中心となっており、現行の政策金利よりも高くなっています。図の作成時点においてFOMCメンバーは12月での利上げを考えているかもしれません。ちなみに2017年末には1.125%となっていますが、1回の利上げの幅が0.25%とすると2017年には2回利上げがあるものと思われます。
図1と図2の数値は今後の経済情勢によって大きく変化する可能性があり、現時点の予想は将来を保証するものではありませんが、メインシナリオとしては12月のFOMCにおける利上げとなるでしょう。市場には12月の利上げが十分に織り込まれていないことから、12月に利上げが決定されると米国株にとっては大幅な下落要因、為替相場においては(日本の金利水準が変わらなければ)円安要因となるかもしれません。日本株にとっては下落要因と円安効果が相殺されてあまり変化がないかもしれませんが、長期的には米国金利の上昇が効いてきて下落要因となるかもしれません。
(eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎)
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