2016年6月27日から7月2日までギャラリイK(東京都中央区京橋)で「色あそび」と題した映像作品が展示されていた。守屋行彬さんとひろみさんのユニットによるものだ。
ゆるやかに流れる水面に様々な色の絵の具を落とす映像作品。この説明だけで終わると自然の不規則性を活かしたありふれたアート作品だが、実はもっと奥の深いものだった。落とした絵の具の色は、流れていく単独の色と、沈殿し他色と混合していく色とに分離していた。この上下2つのレイヤーが重なり、奥行きを持つ美しい不均衡を生み出していた。のちに聞くと、流れていく色と沈殿する色に分離させるため絵の具に幾つかの原料を混ぜているとのこと。美しい不均衡が緻密に計算された結果だったことに驚かされた。
「クリエイティブのクレブスサイクル」によればアートは当たり前の生活(behavior)を深く考え直すきっかけであり、デザインやサイエンスに変革をもたらすことができる。流れていく色と沈殿し混合する色は、忘れ去られる記憶と残る記憶、その残る記憶が混合し人格になる。流れていく色と沈殿し混合する色は、不要な情報と必要な情報、その必要な情報の集積が社会を築く。映像作品を見ながらこんなことを思い描いていた。幅広い脳を使い柔軟な発想につなげるためにもアートは重要なものだと再認識させられた。
(Betonacox Design)