日本株のリスクプレミアムに見られた割高感は解消されたのか?


2015年8月3日配信のコラム「日本株式は割高?市場に織り込まれた投資家の要求収益率」で日本株式のリスクプレミアムとして投資家が要求している収益率は年率6.7%であり、過去の水準と比較すると少々高めになっていたことについて言及しました。計らずも2015年8月以降の日本株相場は下落基調にあり、相場のピークを示唆する結果となりました。今回は、直近の日本株式のリスクプレミアムはどうなっているのか?割高感は調整されたのか?について見てみたいと思います。

リスクプレミアムとは、簡単に言えば様々なリスクを負担するかわりに、期待することができる報酬のことです。日本株式のリスクプレミアムとは、日本株投資から得られる、国債金利など元本割れのリスクが低いとされる資産の利回り(リスクフリーレート)を超過する期待収益率をいいます。

リスクプレミアムの数値は誰にも分からず、推計するしかないのですが、本稿では、前回のコラムと同様に、過去の株式収益率からリスクフリーレートを差し引くという方法で推計しました。具体的には、配当込みTOPIXの月次収益率から無担保コール翌日物の月中平均を月次調整して差し引いた数値を日本株式のリスクプレミアムとしています。計測期間はこれらのデータがそろう1993年7月から2016年7月までです。ちなみに2016年3月からは無担保コール翌日物の月中平均がマイナス、つまりリスクフリーレートがマイナスという、推計理論の前提に疑問符が付く事態となっていますが、あえて推計方法は変えていません。

図は月次で集計したリスクプレミアムの120カ月、つまり10年間の移動平均です。平均値は年率換算しています。このグラフからは、過去日本株に投資する場合にどれだけのリスクプレミアムが実現し、また、将来にわたり投資家が要求しているかを表していると考えられます。このリスクプレミアムは時期によって変動しており、投資家が高い要求をしている時期もあれば、要求がマイナスとなっている時期もあったことが分かります。

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2016年7月末時点の今後10年のリスクプレミアムは年率1.9%となっており、前回のコラムの2015年6月末時点の年率6.7%に比べて相当低下しました。過去の水準と比較すると、高い要求収益率とはいえないので割高感はなくなったと考えられます。しかし、要求がマイナスとなっている時期があります。この時期をどう解釈するかですが、多くの市場参加者が株式投資のリスクはもう取りたくない、収益は要りませんので誰か私の持っている株を買ってください、という時期と解釈できると考えられます。過去にはこのようにリスクプレミアムがマイナスの時期があったことを鑑みると、どん底の安値で買付けたいという投資家にとっては、年率1.9%という水準はまだまだ割高な水準であり、買い出動の時期はまだ先のようです。

(eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。