米国株は高値警戒ゾーン突入か?


米国株式市場は主要株価指数が過去最高値を更新するなど好調を維持していますが、米国の失業率の傾向を見ると高値警戒ゾーンに突入した可能性があります。一般に、景気低迷期は失業率が上昇傾向にあり、景気回復期であれば失業率は低下傾向となります。なお、単に失業率が「低い」のと「低下傾向が続いている」の意味合いは異なります。失業率の「低下傾向が続いている」のであれば景気回復期といえますが、単に失業率が「低い」というのは景気拡大が止まったピーク状態を示している可能性があるため、単に「低い」というのは景気動向を見る上ではあまり参考にならず、失業率が「低下傾向」にあるのかどうかを見るべきと思われます。

この図は米国の失業率、失業率の3ヵ月の移動平均、S&P500指数の月次データです。移動平均は失業率が上昇傾向にあるのか、低下傾向にあるのかを見るために表示しています。失業率と株価の関係をみると、低下傾向にあるときは株価は上昇傾向にありますが、失業率の低下傾向が止まる、図の移動平均が横ばいになるとその後に米国株が下落しています。失業率の動向は米国株下落の前兆として役に立ちそうです。

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8月初旬に発表された2016年7月の米国雇用統計では失業率が6月と同じ4.9%であり、水準自体は「低い」数値であり、米国経済の堅調さが示されたという解釈もできそうですが、5月の4.7%を2ヵ月連続で下回ることができなかった点から、米国の失業率の低下傾向が止まった可能性があります。

2008年12月、経済テコ入れのために米国の政策金利は0.25%に引き下げられ、その後の株価上昇を経てようやく2015年12月に政策金利が引き上げられて0.50%となりました。米国の金融当局としてはゼロに近い政策金利から脱却して金融政策を正常化するとともに、次の経済危機に備えて政策金利を下げる余地を残しておきたいという意図があったかと思われますが、一般的に政策金利の引き上げは株価にとってはマイナス材料であるため、なかなか踏み切ることができませんでした。今年、政策金利の引き上げがあるとすれば、9月か12月との予想が多いようですが、この遅きに失した政策金利の引き上げが株価下落の引き金になるかもしれず、警戒したいところです。

(eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。