秋の2次補正「景気対策」では、地域通貨「プレミアム付き商品券」を電子化せよ


■プレミアム付き商品券「しまとく通貨」の電子化

「プレミアム付き商品券」という言葉を最近よく見かけるようになった。額面以上の金額を使えるというもの。全国の9割以上の自治体で発行され、平成26年度補正予算から約1600億円が用意された。

こうした国策の流れの中で、長崎県内関係離島5市町(壱岐市、五島市、小値賀町、新上五島町、佐世保市宇久町)は6月13日、県内関係離島7市町(壱岐市、五島市、小値賀町、新上五島町、佐世保市宇久町、対馬市、長崎市高島町)で共通に使用できるプレミアム付き商品券「しまとく通貨」を10月から発行すると発表した。

この「しまとく通貨」は、6月13日付け日本経済新聞でも報じられた。商品券を「電子化」することが話題になっているからだ。


(上)紙で発行されている「かつしかプレミアム付商品券」
(下)電子化された「しまとく通過」

商品券というと、通常は、写真にあるように、紙で発行されたものが定番であろう。(画像上)

しかし、「しまとく通貨」は、写真にあるように、電子スタンプをスマートフォンの画面に当てることで利用できる。(画像下)

こうした電子化により、商品券の印刷・配送・保管費をゼロにし、精算業務を効率化することで、25%程度のコスト削減が可能になるそうだ。

「しまとく通貨」を電子化する際に採択した基幹システムは、株式会社J&Jギフトと株式会社ギフティが共同で提供する電子地域通貨システム「Welcome! STAMP」。

この画期的なシステムを開発したギフティは、自社サービスとして提供してきたeギフトの販売・流通システムを応用した。

「しまとく通貨」は、離島経済の活性化と交流人口の拡大を目的に、平成25年4月から発行され始めた地域通貨。1セット5000円で販売され、1000円分の特典(プレミアム)が付く商品券。利用対象者は、島外からの観光客など来島者に限られ、第1回の発行時期(平成25~27年)の3年間で約104億円分の地域通貨が販売された。


■電子化「地域通貨」が経済を活性化させる!?

この地域通貨の流通は、離島経済の活性化に大きく貢献した。それまで旅行者を獲得できていなかった地域からの来島者が増えた。離島の閑散期である年末・年始や冬場の来島者も増え、県内の複数の島を巡るツアーが新たに実現したりもした。

6月2日に政府決定された「経済財政運営と改革の基本方針2016」(いわゆる『骨太の方針2016』)においても、消費者マインド喚起のため、プレミアム付き商品券の発行に関して前向きな言及がなされている。

「しまとく通貨」の電子化で期待されるのは、地域通貨(プレミアム付き商品券)が抱える様々な課題を克服すること。

地域通貨に関して危惧されるのは、商品券の印刷・配送・保管などの直接コストと通貨運営に必要な事務作業などの間接コストの負担が決して軽いものでないことや、従来紙での発行が主流であったため不正利用されやすいこと。

だが、ギフティが開発したこのシステムを導入することで、加盟店は電子スタンプを用いて簡単に決済・精算し、業務負荷が大幅に軽減される。電子スタンプは数千円程度と安価で、導入も容易。利用者は、専用のWEBページで地域通貨の管理と利用をすることができ、紙やICカードの発行は不要。つまり、日本国内で初めて「オール電子化された地域通貨」のだ。

「しまとく通貨」は、スマートフォンや携帯電話などの電子端末を媒体として携行が可能。地域通貨の紛失や置き忘れを防ぐことができる。購入時に本人確認を行ってデータ管理されるため、2次利用などの不正利用を防ぐことができる。

更に、地域通貨の電子化はデータの収集・蓄積を容易にするので、ビックデータの活用による観光客動向のマーケティングも可能となる。

今秋の国会では、大規模な経済対策を組み込んだ今年度補正予算が編成される見通し。その中で、地域通貨を活用した景気刺激・消費喚起策が提起されるだろうが、「しまとく通貨」のような電子化を原則とすることで、低コストのプレムアム付き商品券を普及させる好機としていくべきだ。

(NPO法人社会保障経済研究所代表 石川 和男 Twitter@kazuo_ishikawa