長期投資家とヘッジファンドの換金売りで8月相場に警戒?


6月24日の日中、英国の国民投票の結果がEU離脱、いわゆるBrexitとなり、米ドル対円相場は一時99円台に、日経平均株価も1,300円超の大暴落となりました。日本の金融市場は時差の関係で、世界の主要市場の中でも23日の投票結果の影響がもっとも早く受けましたが、極端なまでの大暴落は世界中の投資家のリスク回避姿勢を鮮明化したものともいえます。

Brexitによってどのような影響が世界の政治や経済などに出てくるかを予想するのは極めて難しいですが、離脱されたEU側の主張を見る限り、EU内にいることで英国が得てきた経済的便益を没収するペナルティを英国に科したいという意図が見られます。また、離脱手続きには時間を要すことから欧州の政治停滞も避けられそうにありません。英国や欧州の経済成長が減退する可能性は高く、ロンドンは金融の中心地であることを考慮すると、金融セクターを媒介して世界経済に暗い影を落とすと思われます。

24日に動いた投資家は比較的短期的な投資を行う投資家が中心だったと思われますが、長期的な投資を行う投資家も、英国と欧州の低迷を嫌気して保有する株式などの資産を売却してくると思われます。図は米国のミューチュアルファンド、いわゆる投資信託のうち、株式に投資するタイプの資金流入とS&P500指数の推移です。長期投資を前提とする投資家が、ミューチュアルファンドを購入すれば資金流入となりプラス、解約などで現金化すれば資金流出となりマイナスとなります。投資家のリスク回避志向が強まれば資金流出となり、ミューチュアルファンドを通じて株式市場の売り圧力となります。

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2015年の前半までは堅調な株式相場を背景に資金流入が続きましたが、2015年8月以降は資金流入が小さくなり、株式市場も横ばい傾向です。2015年8月は、中国による人民元切り下げ、原油安、米国の利上げ開始の後退から米国景気が不安視された時期です。株価の下落が先か、投資家のリスク回避による資金流出が先かというと、おそらく株価の下落が先だとは思いますが、株価の下落→投資家のリスク回避による売り→さらなる株価の下落、という下落が下落を呼ぶスパイラルは想像できます。

さて、今後についてですが、今年の7~8月はBrexitを受けた長期投資家のミューチュアルファンドの解約に伴う売りが予想されますが、ヘッジファンドの解約売りも重なる可能性があります。一般的にヘッジファンドは3、6、9、12月末の45日前に解約を受け付けることが多いとされ、すぐに解約したい場合は9月末となりますが、9月末で解約するには45日前の8月中旬までにヘッジファンド側に解約通知が必要なるということです。ヘッジファンドは解約通知を受けてから保有ポジションの解約をするため、このヘッジファンドの換金売りも加わる今年の8月中旬は、大規模な換金圧力が株式市場に発生する可能性があり、世界中の株価が大幅に下落するリスクがあることには注意しておいたほうが良さそうです。

(eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。