長期的に原油相場は上昇へ。銅相場の底入れはまだ先か?


原油相場は乱高下を繰り返しながらも最近ではWTI原油先物が45ドルを超えて回復するなど長期的な視点で見れば底を打ったかもしれません。その一方、鉄以外の金属で産業用金属の代表格といえる銅の相場は、原油相場と似たような傾向にありましたがが最近の原油相場の上昇傾向にもかかわらず下落傾向が続いています。

図は原油相場の代表格、WTI原油先物価格と、銅相場の代表格のLME銅価格の月末値の推移です。WTIはウエスト・テキサス・インターミディエート(West Texas Intermediate)の略で、米国産の原油です。WTI原油先物はニューヨークマーカンタイル取引所で取引されています。LMEはロンドン金属取引所(London Metal Exchange)の略で、ここで決められる銅価格は世界的な指標とされます。原油相場、銅相場ともに2008年のリーマンショック後の世界的な経済混乱で大幅に下落しました。昨年末から今年始めにかけて原油相場はリーマンショック後の安値を下回るまで下落しましたが、その後は反発し、長期的な視点で見ると上昇傾向に入った可能性があります。その反面、銅相場は短期的には上昇することがありましたが長期的な視点で見ると下落傾向が続いています。

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最近の原油相場の回復は、米国での生産調整が進んだことが大きいと考えられます。産油国のベネズエラの経済不安による生産調整やカナダのオイルサンド地帯の森林火災なども原油の供給減少につながり、ひいては原油高に影響を与えているかもしれません。加えて、ゴールドマン・サックスは原油相場に弱気な予想をしていましたが、第2四半期の平均価格を45ドル、2016年後半は50ドルと最近になって弱気予想を撤回したことで、投資家心理への影響もあったかもしれません。

一方銅については、世界一の銅の消費国である中国の景気悪化の影響を受けて、下落基調が続いていると考えられます。つまり、銅相場の下落は中国での建設、設備投資需要が戻っていないことを示唆しているものと思われます。この背景として、中国国内の景気後退にともなって民間部門の負債が増加していることが各種研究機関によって報告されていますが、この影響で設備投資に消極的になっていることが考えられます。さらに、中国当局が進めている汚職撲滅運動により、地方政府幹部が企業との契約や建設案件の承認において目立った行動をしないようにしているため、地方で開発が進まないという指摘もあるようです。

(eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎)

※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。