2016/04/14

「女性管理職」の在り方をもっと柔軟に!

今月1日から、『女性活躍推進法』(☆)が施行された。『男女雇用機会均等法』が1986年に施行されてから30年、同法の前身である『勤労婦人福祉法』が1972年に施行されてから44年の月日が経過してのことだ。(☆ http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000095826.pdf

日本は、実は戦前から一貫して労働力の雇用化が進んできており、その中で女性の職場進出も捗ってきている。1970年代は既に、雇用者総数の3分の1は女性で、その過半数は既婚者。当時まだ、結婚や妊娠・出産を機に退職し、家事・育児のために労働市場から退くことが女性の一般的な働き方だとする考え方は根強く残っていた。

しかし現実には、多くの女性が家庭と職業の両立の問題に直面していた。そしてそれは、今でも同じ。だから、今になってもまだ、女性活躍推進法を制定しなければならないのだ。

この法律によって、国や地方公共団体、労働者が301人(1年以上継続して雇用している非正規社員を含む)以上の大企業には、①自社の女性の活躍状況を把握し、課題分析を行うこと、②行動計画の策定、届出、社内通知、公表を行うこと、③自社の女性の活躍に関する情報を公表することが「義務付け」られる。労働者が300人以下の中小企業には、努力義務のみ。

画期的なのは、上記三点に係る法的な「義務付け」。罰則規定はないが、横並び意識が強い日本企業の多くにとって、この「義務付け」が女性活躍を推進にするための相当なプレッシャーになることはまず間違いない。女性活躍推進法が成立する見通しが立って以降、各地で企業の人事部向けの‟対策セミナー‟が開催され、いずれも大盛況だったそうだ。

世界経済フォーラムが毎年発表している世界各国の男女格差についてのレポート「グローバル・ジェンダー・ギャップ・レポート」によれば、日本の2015年の順位は101位。ここ数年、100位台を彷徨っており、当然のことながら先進国の中では断トツで順位が低い。

独立行政法人『労働政策研究・研修機構』の調査結果を資料1に掲げる。それによると、女性の管理職の割合は約1割。日本での就業者に占める女性の割合が約4割であることや、諸外国の女性管理職の割合との比較においても、圧倒的に低いと言わざるを得ない。

<資料1:就業者及び管理職に占める女性の割合(2013年)>

出所:データブック国際労働比較2015(労働政策研究・研修機構)

今回の女性活躍推進法において、上記の「義務付け」にまで踏み込んだのは、こうした日本政府の危機意識の現れもあったはず。そんな画期的な法律が施行された一方で、なぜこれまで女性活躍推進が難しかったかを考えさせられる要因もまだまだ少なくない。

その一つが「管理職の在り方」。女性活躍推進法では、女性の積極採用・積極登用を謳っており、管理職に占める女性比率を押し上げることを推奨する。でも、「管理職になりたがらない女性が多い」と語る企業の人事担当者は多い。何故なのか?

その理由として考えられるのが、"画一的な管理職像"。管理職の配偶関係や末子年齢に関する調査結果は資料2の通りで、女性管理職は男性管理職に比べて、未婚率も、既婚であっても子どものいない率も、明らかに高い。ライフスタイルは個々人の自由であるが、はっきりしているのは、管理職に就いている「子育て期の女性」は、現状では極めて限られているということ。今は、時間制約なく働ける人材が管理職としてステップアップしていくパターンが一般的なのだ。

<資料2>

出所:「男女正社員のキャリアと両立支援に関する調査」(労働政策研究・研修機構(2014年))

2013年から総合職女性と企業とのフレキシブルな仕事のマッチング事業を手掛けてきた Waris が実施したアンケート調査(http://waris.co.jp/archives/7079)によれば、総合職女性が退職を検討する時期として最も多いのが27歳と35歳。現状の管理職像を目の当たりにした‟管理職適齢期"の女性たちが、組織内で自身の将来像を思うように描けずに退職する意思を固めていくのだろう。

このアンケートではまた、女性たちが退職・転職・独立を検討することになったきっかけについても調査している。回答内容を見ると、「これまでの職場ではキャリアアップできないと思ったため(39%)」と「仕事にやりがいはあったが、家族との時間のバランスが確保できなくなったため(38%)」がほぼ同じ割合で最多。これに「新しい環境で仕事をしたいと思ったため(36%)」、「これまでの職場ではある程度、仕事を"やり切った"感覚があったため(31%)」が続く。

回答者の約8割が子どもを持つワーキングマザーだが、興味深いことに、必ずしも育児や出産そのものが退職の直接のきっかけになるわけではないようだ。「育休復帰後、時短勤務を選択したら補助的な仕事に配置転換された」、「時短勤務でも他の人と遜色のない成果を挙げているのだが、評価されることはなかった」といった回答者の声からわかるように、長時間労働やそれに基づく制度・評価がベースとなる中、育児期人材が能力発揮することが難しくなり、仕事への不満から退職に至るプロセスが透けて見える。

女性活躍推進法が施行されたことを受け、企業では女性管理職比率アップの施策が一層実行されていくだろうが、その先に待っている管理職像が現状と同様のものであっては、総合職女性たちの昇進意欲を刺激することは難しい。欧米では「週3~4勤務の管理職」や「管理職の役割を複数名でシェアリングする」などのフレキシブルな管理職の形が出てきている。

日本でも、そうした柔軟な管理職の在り方が追求される必要がある。そういう時代になっている。

(NPO法人社会保障経済研究所代表 石川 和男 Twitter@kazuo_ishikawa

※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。 本稿は筆者の個人的な見解です。
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