訪日外国人旅行者数の増加は日本経済の救世主になるか?


観光庁の発表によると昨年の訪日外国人旅行者数は1,974万人と前年比で47.1%の増加となり、訪日外国人旅行者が消費した金額は約3.5兆円に達したとのことです。日本の国家予算における昨年度の公共事業の歳出は約6兆円ですから、外国人旅行者が日本に落としてくれた金額がいかに大きかったかがわかります。国籍・地域別でみると最も消費額が大きいのは中国で1兆4174億円(40.8%)、続いて台湾の5,207億円(15.0%)、韓国の3,008億円(8.7%)となっています。中国は昨年の株安や両替規制により、高額品では多少影響があったのかもしれませんが、一般的な観光での消費にはあまり影響がなかったのかもしれません。

図は訪日外国人数の月別の推移です。今年の1月と2月を合計した訪日外国人数は前年比で約1.4倍、前々年比で約2倍になっており、今年も訪日外国人の消費が期待できそうです。



観光庁の訪日外国人消費動向調査によりますと、訪日外国人が全体として消費額が大きいものは「宿泊料金」、「飲食費」、「服(和服以外)・かばん・靴」、「化粧品・香水」、「医薬品・健康グッズ・トイレタリー」などがあります。中国からの観光客による高額家電の爆買いもメディアを騒がせましたが、単価ではなく総額で見ますと「菓子類」や「その他食料品・飲料・酒・たばこ」と同程度の支出額となっており、「服(和服以外)・かばん・靴」の半分くらいの規模です。

また、訪日外国人が訪れる都道府県としては、表1のとおり全体は東京都、千葉県、大阪府と続いていますが、これは羽田空港、成田国際空港、関西国際空港があるためと思われます。しかしながら中国からの訪日外国人は6位に山梨県が、韓国からの訪日外国人は2位に福岡県、6位に大分県が入っており、全体の傾向とは若干異なるようです。



表2はどこから入国したかをまとめたものです。利用した空港・海港がある都道府県ですが、全体と成田国際空港がある千葉県から入国し、東京、神奈川方面に向うというルートが想定されます。中国の方ですと東京を越えて山梨県にも向っているようです。また、関西国際空港がある大阪府から入国し、大阪市街地と京都に向うというルートも多いと考えられます。韓国の方は福岡県からも多く入国していますが、福岡空港に加えて博多港も利用しているようで、そこから大分県をはじめ九州各県に向うというルートも多そうです。



政府は訪日外国人のビザ要件を緩和するなど海外からの観光客を増やす取り組みをしており、今後訪日外国人旅行者がさらに増えれば、観光業から日本経済の活性化に寄与することが期待されます。主要観光地や国際空港がある地域に展開しているホテルチェーン、鉄道・バス運行業、旅行代理店事業、食品や飲料メーカーには恩恵があるかもしれません。東京都以外の各地域の観光関連銘柄としては次の銘柄が考えられます。

・大阪府…近鉄グループホールディングス (9041):私鉄では営業キロ数で国内最大。あべのハルカス事業、百貨店やホテル等幅広く展開。真田幸村をテーマにしたツアーを企画。

・京都府…京福電気鉄道 (9049):京都と福井の京阪電鉄系私鉄。金沢新幹線の波及効果により、福井県の東尋坊や永平寺などへの観光客が増加。

・愛知県…名古屋鉄道 (9048):鉄道、百貨店、ホテル等幅広く展開。明治村運営。

・千葉県…オリエンタルランド(4661):東京ディズニーランド運営。筆頭株主は成田空港へのアクセス路線を持つ京成電鉄(9009)。

・福岡県・大分県…西日本鉄道(9031):福岡の電鉄大手、運輸事業やホテル事業 ・山梨県…富士急行 (9010):富士急ハイランド運営、周辺エリアの鉄道やバス事業。

(eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎)

※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。