今月2日付け毎日新聞ネット記事によると、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)を導入したことなどを背景に、太陽光による発電量が最近10年で23.3倍になったとのこと。
<記事要旨>
・太陽光は05年度123万メガワット時から14年度2869万メガワット時に増。固定価格買取制度が導入された12年度以降の増加分が8割。
・風力は225万メガワット時から505万メガワット時に、バイオマスは56万メガワット時から196万メガワット時への増。
![](https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgatS_CLmDWLGSbUa-NlEHRlHvxpUynFp3W-H6wuK745FTSk7CFJL58trfhS6ponP5zSRFTdqRGXtJED6QUXf5uFCwB28r9s3hmG4U3Y4xLS59aBoWVFWg0xInzk2rimf0UDHJZygouz3Ea/s1600/20160406column1.jpg)
(出所:2016.4.2 毎日新聞ネット記事)
資源エネルギー庁の公表資料では、2012年7月に導入されたFITに基づく買取電力量と買取金額の推移が掲載されており、その概要は次の通り。これを見ても、上図の再エネ各種の傾向、即ち太陽光の伸びが突出していることを窺い知ることができる。
![](https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhddniOU-nCp8bcrW-hM-0A675nf3Adx8Ky-S3iUTS28uSzIRo3StMv_yuyXdyfZcCiKK8FBYrdCKDmq05tfRfgAxjvXrqTrSkOXzWUgRQcOd5jbKTxkvyTON_O2ZNPOIJnXp3UI9W_Deue/s1600/20160406column8.jpg)
FIT対象となる再エネは、従来の大型水力は除かれている。このFIT対象となる再エネが全体の発電電力量に占める割合を、FIT導入の前後で比較すると、2011年度1.4%→2014年度3.2%に増加している。
![](https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjiSgwoSJAMYknxb0VdFApklBbIF3XhQBIdZNbIzl8VYIFVtPaeQtWFK5tcsxi_XXVaEg96Zr-8ex1PMiACeOG91HgizOml9xoaW6FyX4kEmosu-nJPSa1_Q8l2dIvrHyQbbt_g3tZn5QNY/s1600/20160406column2.jpg)
(出所:2016.1.19 資源エネルギー庁資料)
再エネへの期待感は大きいと思われる。だが、FITのような補助制度で支援したとしても、再エネ5種のうち、太陽光の伸びが突出しただけで、太陽光以外は大して伸びていない。
これは、補助制度の問題ではなく、日本における再エネの開発と導入には、発電コストの高さ、開発地点の制約、周辺環境との調和の難しさなど、相当の隘路(ボトルネック)があることによる。更に、太陽光については、今後とも買取価格の低下が見通されており、伸び率が鈍化することは確実。
別の寄稿などで書いたが、政府は2050年までに温室効果ガス排出量を現在より80%削減する国内目標を掲げている。これを達成しようとすれば、原子力発電の正常化だけでなく、再エネの飛躍的導入も必要となる。
しかし、それは無理筋。再エネの飛躍的導入は、蓄電システムが商用化され、一般に普及するまで待たなければならない。
因みに、アメリカの動向と、再エネ政策で日本が殆ど模倣しているドイツの動向の概略は、それぞれ次の図の通りで、
①アメリカ:再エネの伸びの大半は風力の著しい伸びによるもので、水力以外が水力を超え始めた。太陽光とバイオマスは微増傾向、地熱は横這い、水力は減少傾向、原子力は横這い。化石燃料部門では、石炭の減少と相俟って天然ガスが石炭を超え始めた。
②ドイツ:再エネの伸びは、近年では風力とバイオマス、ごく最近では太陽光の伸びが寄与。水力は横這い傾向。原子力は減少傾向、化石燃料はほぼ横這い傾向。
《アメリカ》
![](https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjryGk2JCjHS0s1Rg0GZmdAONVj-Z2wwzjB0aBY2xnADIkDLNWUul-yIvnRiHktoGJlbk-8ONxY0Lvouwiwq_7LI1aF2D_eu2dC8IUVnZd3cY2vMvEoCYpBQDHLtoxZMm1RerpAvPhtzp1_/s1600/20160406column3.jpg)
(出所)http://www.eia.gov/todayinenergy/detail.cfm?id=25392
![](https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgKE7jNhZrb9AKT5oIIwh-f1nHReC9LbnglVJKzIjHxLaVLSYHtulyJmXzLCcCH5KEZTTNf4C-A6c7gOndsIvj5GtH1hf9agOZa10WlUkXDKOUi8qz9zRE485C2Kxagh9xC1etwMORaOXL2/s1600/20160406column4.jpg)
(出所)http://www.eia.gov/electricity/monthly/update/archive/march2016/
![](https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgKEEvoTLiOvli-WO3XTuoFZA61kvD2BwaS_M5h1YkXH8m7Desii-USNSseCzLviz8lW1KBd3GRpjidZurcdEIs92ft08aPkbCYf7P_x6z6L4JmZxT7pCr3FkuO6t3yaISHZHMU2QfVcRfO/s1600/20160406column5.jpg)
(出所)http://www.eia.gov/electricity/monthly/update/archive/march2016/
《ドイツ》
※画像をクリックして拡大
(出所)Energiedaten: Gesamtausgabe(Stand: Januar 2016)
※画像をクリックして拡大
(出所)The German Energy Transition in International Perspective(2016.3)
(NPO法人社会保障経済研究所代表 石川 和男 Twitter@kazuo_ishikawa)
※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。 本稿は筆者の個人的な見解です。