来る4月1日、家庭向けの電力小売が全面自由化される。では実際、どのくらいの人々が、電力の購入先を今の大手電力会社から“スイッチング(切り替え)”をするつもりだろうか?
経済産業省の認可法人である電力広域的運営推進機関(広域機関)が3月4日24時時点までのスイッチングの申込み状況を集計したところ、下の資料にある通り、全国計で約36.5万件であった。
《資料》
(出所:https://www.occto.or.jp/oshirase/hoka/files/201603011_swsys_riyoujyoukyou.pdf)
この場合のスイッチングとは、電力小売全面自由化を機に消費者が購入先を変更すること。1月29日時点の集計では、全国計で約5.4万件であったので、5週間で約7倍になった計算。
全国の世帯数は5641万(2015年1月1日現在;総務省調査)ので、今のところ、切替え予定件数は全体の0.6%程度。
このスイッチング予定数については、上記の資料にあるように、現時点では、東京電力管内と関西電力管内が圧倒的に多く、他はそれほどでもない。
因みに、経産省が昨年11月18日に発表した資料(http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/denryoku_gas/kihonseisaku/pdf/002_05_00.pdf)では、「8割の人は、少なくとも切り替えの検討はする意向」、「現時点で切り替えを前向きに捉えている(「すぐにでも変更したい」「変更することを前提に検討したい」)人に限っても、25%弱存在する」とのアンケート調査結果が掲載されている。
だが上述のように、現実はそれほど甘くない。
経産省・広域機関は、3月1日にスイッチングを支援するためのシステム(https://www.occto.or.jp/oshirase/hoka/2016-0224_SWsys_start.html)の運用を開始した。自由化市場における民間活動に、政府が堂々と切替えを勧奨しているわけだ。
今回の自由化は“家庭向け(小口需要分野)の電力小売”であるが、“産業向け(大口需要分野)の電力小売”は、2000年以降に順次自由化が進められてきた。それにより、既に電力市場全体の約6割(電力量ベース)が自由化されている。
電力市場では、大口需要分野(産業向け)は比較的儲かる一方で、小口需要分野(家庭向け)はあまり儲からないとされる。
その大口需要分野での自由化の状況を見ると、新電力は834社だが、供給実績があるのは97社、販売シェアは7%程度。(http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/denryoku_gas/kihonseisaku/pdf/002_04_03.pdf)
比較的儲かる「産業向け」でさえ、この程度しかない。果たして今後、あまり儲からない「家庭向け」で、どのようになるだろうか・・・?
(NPO法人社会保障経済研究所代表 石川 和男 Twitter@kazuo_ishikawa)
※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。 本稿は筆者の個人的な見解です。