太陽光発電の入札制度 〜 本当に『完全自由化』したらメガソーラーは即全滅・・・


今月18日の日本経済新聞ネット記事(※1)によると、経済産業省は再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)で、主に企業が持つ大型の太陽光発電の2016年度の買取価格を4年連続で引き下げる検討に入ったとのこと。

※1)http://www.nikkei.com/article/DGXLZO96221860Y6A110C1NN1000/

《記事要旨》
・引下げを検討するのは出力10キロワット以上の太陽光。4年連続で下げ、一段の増加に歯止め。
・出力10キロワット未満の家庭用太陽光は今後普及が見込まれるため、引下げの是非を慎重に検討。
・普及が遅れている地熱や風力、水力発電などの買取価格は高めの価格を維持する方向。
・17年度以降は入札制度を導入して発電コストの安い事業者を優先して参入させ、家庭や企業の負担を抑える。

再エネFITについては、2012年7月の施行時、特に大規模太陽光発電所(メガソーラー)に関しては、既に失策であった。

メガソーラーの買取価格40円(+消費税)は、当時、世界的にも異常な高値であることはわかっており、かつ、先行国のドイツやスペインでの“太陽光バブル”が発生・崩壊を知っていながら、敢えてこのような高い買取価格で施行された。

ドイツとスペインの太陽光発電買取価格の推移と比較すると、一目瞭然だ(参考1)。これは、2012年3月に経産省が提示したものである。この直後の東日本大震災による福島第一原子力発電所事故で、再エネ政策を巡る空気が急速に異様な方角に向かっていったわけだが・・・。

<参考1>
(ドイツ)


(ドイツ)


(スペイン)

(出典:資源エネルギー庁資料(2012.3.6)(http://www.meti.go.jp/committee/chotatsu_kakaku/001_06_00.pdf))

ドイツの例については、私がドイツ政府関係者に対して現地で調査ヒアリングを行った結果報告『再生可能エネルギー政策に関するドイツ調査報告(2015年3月21日;石川和男)』のp15〜16以降(参考2など)に詳しい。

・本文 http://iigssp.org/activity/report_150321_01.pdf
・概要 http://iigssp.org/activity/report_150321_02.pdf

<参考2>

(出典:『再生可能エネルギー政策に関するドイツ調査報告(2015年3月21日;石川和男)』(http://iigssp.org/activity/report_150321_01.pdf))

そして、案の定、日本でも“太陽光バブル”が発生・崩壊した。そういう経緯も慮れば、今回の買取価格引下げは、遅きに失したものの、善処である。

記事では、「17年度以降は入札制度を導入して発電コストの安い事業者を優先して参入させ、家庭や企業の負担を抑える」とあるが、この場合に重要なことは、入札制度における競合対象範囲だ。

太陽光の競合相手を、太陽光だけに限定するのか、風力など他の再生可能エネルギーまで拡げるか、原子力・火力・大型水力も含めた全電源まで拡げるか、である。

“電力システム改革”という名の今次一連の電力自由化の趣旨からすれば、競合相手は全電源であるべきで、かつ、FITによる長期的・固定的・優先的な高価買取りも廃すべきだ、となる。

しかし、このような『完全自由化』と本当にしてしまったら、FITを前提としている既認定の大規模太陽光発電所(メガソーラー)は、即全滅に向かい始める可能性が高い。だから、最初のうちは、新規参入組など限定的な範囲での太陽光発電どうしの競合に限定することになるだろう。

(NPO法人社会保障経済研究所代表 石川 和男 Twitter@kazuo_ishikawa

※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。 本稿は筆者の個人的な見解です。