米国:2015年の原発稼働率は過去最高91.9%


今月21日の米国原子力エネルギー協会(Nuclear Energy Institute)の発表によると、米国では2015年、全米30州にある全99基の原子力発電所の平均稼働率が過去最高の91.9%を記録〔資料1〕。上位10基の稼働率は軒並み100%超となった〔資料2〕。

《原文より抜粋》
Ninety-nine nuclear power plants operating in 30 states posted an estimated average capacity factor of 91.9 percent, based on preliminary 2015 data compiled by the Nuclear Energy Institute. That surpasses the industry’s prior record set in 2007 by one-tenth of a percentage point. Capacity factor measures the total electricity generated as a percentage of potential generation for the entire year.

<資料1>

(出所:NEI “US Nuclear Plants Set Reliability Record in 2015”)

<資料2>

(出所:NEI “US Nuclear Plants Set Reliability Record in 2015”)

資源大国でもある米国は、近年急速にエネルギー自給率を上げてきている。2014年には、エネルギー消費量に占めるエネルギー総輸入量は10%を切る勢い〔資料3〕。石油製品(petroleum products)を中心にエネルギー輸出量が急増している〔資料4〕。

<資料3>

(出所:EIA “Net energy imports as share of consumption at lowest level in 29 years”)

<資料4>

(出所:EIA “Net energy imports as share of consumption at lowest level in 29 years”)

米国では、こうしたエネルギー自給率の向上と同時に、原子力発電所の高稼働率稼働が続いているわけだ。米国では、原子力発電は過去25年間、米国内の電力供給の20%を賄ってきている〔資料5〕。こうしたエネルギー需給面での多様性が維持・向上されていることは、米国の国内エネルギーコスト面やエネルギー安全保障面で大きな利益をもたらしている。

<資料5>

(出所:EIA “December 2015 Monthly Energy Review”)

2000年以降、電気料金は上昇基調にある。特に家庭用は顕著であるが、産業用は最近はやや落ち着いている〔資料6〕。産業用では、電力コストは主要国で最低となっており〔資料7〕、これが米国の産業競争力の強みに一役買っていると思われる。

<資料6>

(出所:EIA “December 2015 Monthly Energy Review”)

<資料7>

(出所:ドイツ商工会議所(DIHK)資料〔2015.3.13〕)

日本が米国から学ぶべきは、こうした強かさだ。

日本で進められるべき真の“電力システム改革”とは、電力コスト上昇を来すことが確実な小売全面自由化や料金規制撤廃、発送電分離といった学者ちっくな机上・紙上だけの理想の追求ではなく、低廉安定供給システムの維持と、エネルギー安全保障の強化だ。

日本では、九州電力川内原子力発電所1号機・2号機が昨秋に再稼働し、関西電力高浜原子力発電所3号機・4号機が今月から来月にかけて再稼働する見通し。だが、他の多くの原子力発電所は停止中のままである。資源ゼロ国の日本が、脱原発だ!などと威勢の良いことばかり叫んでいるのは、お気楽に映るし、滑稽にも見える。原子力代替が見つかるまでは、原子力に一定程度は依存せざるを得ない。

安全対策に万全を期すことは当然であり、大前提。これは、安全規制がどうであろうと、原子力事業者自身の最大の責務。安全規制の運用は、世界の原子力安全規制の標準や、他の産業保安規制に合わせ、新規制基準審査と発電を同時並行とするよう運用改善すべきだ。

(NPO法人社会保障経済研究所代表 石川 和男 Twitter@kazuo_ishikawa

※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。 本稿は筆者の個人的な見解です。