先月27日のTBSニュース(※)によると、今年度の補正予算案に、所得の低い年金受給者1000万人に対して、1人当たり3万円の給付金を配ることが盛り込まれる見通しとのこと。安倍政権が掲げる「1億総活躍社会」の実現に向けた緊急対策の一環。
※:http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2645442.html
これは総理指示なので、この特定の高齢者向けの3千億円のバラまきは、既に確定したものと考えておくべきだ。あまりにも筋悪なこの施策案に関しては、例えば次のような疑問がすぐにも湧いてくるので、来るべき補正予算案審議においては、少なくともこれらの点について政府側は明らかにされたい。
(1)「1億総活躍社会」の実現に向けた対策ならば、交付対象を『低年金者』に限定するのは何故か?
(2)『低年金者』だけを対象にするのは、①『無年金者』(推計110万人以上)との関係、②年金受給前の『低所得者』(生活保護受給者だけで210万人以上)との関係で、不公平なのではないか。
(3)『低年金者』だけに対して、1人当たり3万円を交付することになるとした場合の福利厚生効果や経済効果をどのように見込んでいるか?
因みに、年金受給者数の推移、平均的な年金の月額の推移については、それぞれ資料1、資料2(ともに出所は「平成25年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」〔☆1〕)に掲げた通り。年金受給者全体から見た低年金者の割合や、低年金者のうち1000万人の概ねの内訳を想定することができる。
<資料1>
<資料2>
☆1:http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/nenkin/nenkin/toukei/dl/h25a.pdf
ここから読み取れることは、国民年金受給者の3人に1人程度しか3万円給付の対象にならないことだ。だとしても、総額では3千億円もかかる。同じバラまきでも、こんな特定の高齢者向けの給付金ではなく、保育士の待遇向上〔☆2〕や介護士の待遇向上〔☆3〕に充てるといった大盤振る舞いならば、大手を振って賛成する。
☆2:http://www.huffingtonpost.jp/kazuo-ishikawa/childminder-salary_b_8244532.html
☆3:http://www.huffingtonpost.jp/kazuo-ishikawa/care-woker_b_7006320.html
(NPO法人社会保障経済研究所代表 石川 和男 Twitter@kazuo_ishikawa)
※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。 本稿は筆者の個人的な見解です。