「団塊の世代」の次は『覚悟の世代』だ・・・


先月31日の朝日新聞ネット記事によると、児童福祉法の対象年齢を18歳未満から引き上げる議論が、厚生労働省で始まったとのこと。現在は18歳になると原則として児童養護施設や里親の家庭から出なければならず、自立できなければ貧困に陥りかねないためだ。少なくとも20歳未満とすることを軸に検討しているらしい。

児童福祉法の対象年齢引き上げ案(18歳→20歳)と、成人年齢の引き下げ(20歳→18歳)が、話をややこしくする可能性がある。これは、この記事の後段にも書かれている。

未成年が自立できないことによる貧困については、年齢要因も相当あるとは思うが、年齢要因以外の要因もある。だから、この児童福祉法対象年齢引き上げ案が良いのか、貧困対策として汎用性の高い新政策を立案すべきなのか、しばし考えていくべきと思う。

あともう一つ重要なことは、社会福祉関係の制度変更に実のある成果を求めるには、財源の捻出が必要になるので、それを一緒に提起していくことが肝要となる。多くの新政策においては、財源こそが最大の課題。

私としては、貧困対策拡充のための財源は、社会保障財源の中から転用すべきと言いたい。増税や国債発行という手法もあるが、期待すべきではない。その理由はいちいち説明しない。

公共事業や防衛など他の政策分野の「無駄」を削減し、それを充てるべきとの意見もあるだろうが、これも期待すべきでない。他の政策分野の関係者にしてみれば、社会福祉が無駄に見えることもある。それに、そもそも「無駄」の量は、大した量にはならない。

政策はタテ割りである。これはどうしようもない現実。あえて、他の政策分野の財源で捻出させやすいものはと言うと、公務員人件費である。しかし、これまた大した財源規模にならない。

となると、タテ割り構造の中で賄うしかない。現実的な話で考えると、これが最も財源としては持続性がある。つまり、社会保障財源の配分内容を修正していくということで、もっとわかりやすく言うと、厚生労働省の局・課の予算配分を修正していくということなのだ。

その場合、最も大きな予算項目に焦点を絞るのが合理的。一人当たりの移行させる既得権(これを俗に「痛み」という)が薄く広くなるからだ。となれば、年金と医療。この『高齢者利権』の幾分かをいただくしかないと思う。

これは、20〜30年後、自分の世代にも当然降りかかってくる話。覚悟しておく必要がある。私の世代は、団塊の世代ではないが、「覚悟の世代」になるはずだ。

今から、自分たちの年金や医療費には、今の自分たちの親世代や団塊世代ほどにはおカネをかけられないことを、今から覚悟しておかなければならない。そのために、それぞれは準備しておかなければならない。

(NPO法人社会保障経済研究所代表 石川 和男 Twitter@kazuo_ishikawa

※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。 本稿は筆者の個人的な見解です。