別の寄稿(http://www.huffingtonpost.jp/kazuo-ishikawa/new-three-arrows_b_8242030.html)などで、『児童扶養手当は、第1子も第2子も第3子も同等に!』と書いた。
これに関連して、塩崎恭久厚生労働相が昨日の衆院予算委員会で、所得が低いひとり親家庭に支給している児童扶養手当の第2子以降の加算額について「生活の安定、自立の促進という効果に留意しながら、年末までに加算額の拡充も含めて検討したい」と述べたと、一昨日の毎日新聞ネット記事で報じられている。
児童扶養手当は、現行では、第1子は最大月額4万2000円、第2子は5000円、第3子以降は3000円。これに関して、上記記事には「2014年3月末時点の受給者数は107万人で、15年度予算は1718億円。仮に第2子、第3子とも1万円に引き上げる場合、370億円程度の財源が必要になる」とある。
厚生労働省が所要財源の規模を明示したことは大きな前進ではあるが、問題はその財源確保策。
年明けに国会提出が予定されている補正予算案にどのくらいの予算額が計上されるか、また、その運用改正内容はどうなるかは、目先の話として今は重要。しかし、その先を見据えて、来年度以降に継続できる財源確保策を建立しておく必要がある。
過去5年間の社会保障のいわゆる“自然増”は、次の表の通り、年間6700億円〜1兆1600億円。
(出所:財務省・財政制度分科会資料(2015.10.9))
この自然増は、高齢化(人口構造の変化)に伴う伸びとその他の要因(医療の高度化等に伴う単価増等)に伴う伸びに分かれる。政府の考え方は、「「高齢化に伴う伸び」はやむを得ない増だが、「その他要因に伴う伸び」に相当する部分は、社会保障以外の経費と同様、制度改革や効率化等に取り組むことにより、伸びを抑制していくことが必要」というもの。
この中に、『子ども子育て』対策は考慮されていない。しかし今後は、年金・高齢者医療の伸びを押しのけてでも、子ども子育て対策の自然増を積み増していく必要がある。年金・医療等の年間6700億円〜1兆1600億円に比べれば、児童扶養手当の拡充に必要な370億円は1/30〜1/20以下でしかない。
「「高齢化に伴う伸び」はやむを得ない増だ」と言うならば、『子ども子育て対策の拡充は、少子化対策としてやむを得ない増だ」と言うこともできる。(もっとも、高齢化による伸びは異常なので、それは本来、『高齢者一人当たりの年金・医療費は縮減せざるを得ない』となるべきだが・・・)
国の形を変えるとは、いわば財源配分の大幅修正。一気には無理なので、それなりの時間をかけて進めていかなければならない。『官から民へ』はもちろん結構だが、近未来の日本のためには『祖父母から孫たちへ』が最大の課題である。
利権の移転が難しいことは重々承知だが、子ども子育て対策にあまりにも冷た過ぎる行政の仕組みを改める好機にすべきだ。政治の決断次第である。
(NPO法人社会保障経済研究所代表 石川 和男 Twitter@kazuo_ishikawa)
※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。 本稿は筆者の個人的な見解です。