2015/10/07

“身を切る改革”で身を切るのは、議員と公務員だけか? 〜 高齢者を説得できる政治

今週5日付け日本経済新聞ネット記事(http://www.nikkei.com/article/DGKKASFS04H27_U5A001C1PE8000/)によると、民主党と維新の党が来年夏の参院選に向け、国家公務員の給与の2割減を明記するほか、国会議員の定数削減も盛り込む方針とのこと。

<記事要旨>
・民主党は公務員給与2割減で維新に譲歩、維新が慎重姿勢を崩していない消費増税の受入れを迫る。
・政府は2012年度から2年間、震災復興財源を捻出する特例として国家公務員給与を平均7.8%引下げ。
・維新は「身を切る改革のために継続すべきだ」と主張。

民主党と維新が政策協調したり、まして両党がそのまま合併するなどというのは、“衝撃ゼロの野党再編”でしかない。今やるべきは『与党再編』であり、そのために維新・民主の相当数で結成する新党が、与党と政策協調を持ち込むことから入っていくべきと思料する。非常に難しいだろうが、それを目指したいと思っている維新・民主の国会議員は少ないのではないか・・・。

さて、維新が以前から執心の“身を切る改革”に関してであるが、それ自体は多くの有権者には耳触りは悪くないだろう。 増税や復興財源の捻出を国会などで説得していく時に、議員歳費削減とともに、定番となっている施策メニューの一つが公務員人件費の削減。

2015年度(平成27年度)ベースでの「公務部門の人件費」は総額26.4兆円〔資料1〕。このうち、「国家公務員の人件費」は約5.15兆円。維新が主張している“身を切る改革”の対象は、この約5.15兆円で、これを2割削減すると約1兆円が捻出される。

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<資料1>
(出所:財務省主計局「平成27年度 公務員人件費」

更に、議員定数削減は議員歳費削減に直結するので、それ相当分の財源捻出が可能。ここに、「義務教育費国庫負担金」や「地方公務員の人件費」まで含めた総額で考えると、仮に2割削減とした場合、約5.28兆円が捻出される計算。

“身を切る改革”の手法としても、公務員定数を削減することには大賛成。しかし、公務員給与を今以上に削減することには、正直言って賛成できない。選挙の 度に公務員人件費を削っていては、公務そのものを持続することはできなくなる。次から、カードが切れなくなる。

もちろん、公務員給与水準については、徒らに据え置いたり、まして無闇に引き上げるべきものではない。

ただ、本当に削減すべきものは他にあると言いたいのだ。昨今及び今後の財政逼迫の原因は、圧倒的に、年金や医療など高齢者向け予算を大宗とする社会保障費の伸び〔資料2、資料3〕。

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<資料2>
(出所:財務省主計局「社会保障」(2015.4.27)

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<資料3>
(出所:財務省主計局「社会保障」(2015.4.27)

国全体の財政配分を考えれば、少子高齢社会に突入した我が国において高齢者向け予算の伸びは、もはや税収・保険料収入に見合わないほどに分不相応なものになっている。本気で削るべきは、公務員人件費でも議員歳費でもなく、年金や医療など高齢者向け予算だ。これは、政治家の口からはなかなか言えないことではあろうが、誰が見てもすぐわかること。

これが政治的にも非常に難しいことはわかっている。だが、これを段階的にでも断行していかないと、現在の高齢者には最善であっても、将来の高齢者(つまり現在の現役世代)には最悪の結果をもたらすことになる。自分たちが老後になる時に国を支える子孫たちが、今よりも更に苦しむことになるからだ。

このまま放置すれば破滅的な事態になることをきちんと説明しながら、今後は、ひたすら高齢者を説得し続ける政治にならないといけないはずだ。多くの若年層は、夢を見ることができないのではなく、夢を見ることが想像できなくなっているのではないか。少子高齢社会の中に最初っからいなければならない若年層。そんな世の中を作り上げたのは、他でもない、我々以上の世代の人々なのだ。その責任をいつか必ず負うべきだ。

(NPO法人社会保障経済研究所代表 石川 和男 Twitter@kazuo_ishikawa

※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。 本稿は筆者の個人的な見解です。
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