スイスの資源商社でグレンコア・エクストラータという会社がある。この会社の株価が9月28日の1日で3割ほど下落し、株式市場に衝撃が走った。同社の債務支払い能力が懸念されたのが理由とされている。少し前の24日には米国の重機メーカーのキャタピラーから業績見通しの下方修正と最大1万人の人員削減の発表があり、29日には海運中堅の第一中央汽船が民事再生法の適用を申請した。欧州、米国、日本で起きたこれらの事象の原因の1つに資源価格、特に石炭価格の下落がある。
世界の石炭貿易量に占める比率が高い企業を石炭メジャーと呼ぶ。グレンコア・エクストラータはBHPビリトン(英/豪資本)、リオ・ティント(英/豪資本)、アングロ・アメリカン(英資本)と並ぶ石炭メジャー4社のうちの1社だ。石炭価格の低迷により石炭メジャーの経営は苦境に立たされている。グレンコア・エクストラータは株価の暴落で目立っていたが、石炭メジャー4社の株価は下落の一途をたどっている。もちろん石炭以外の鉱物資源も全般的に下落基調にあることも原因の1つだろう。
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石炭価格の低迷は石炭の消費低迷によるものと考えられるが、2013年の統計で石炭消費量と石炭輸入量で世界1位の中国の消費量が2014年以降落ちているためではないかと考えられる(ちなみに日本は石炭輸入量で世界2位)。中国の景気減速→石炭需要の減少→石炭価格の下落→石炭メジャーの業績悪化、という連鎖になっていると思われる。冒頭のキャタピラーは石炭採掘用の重機の売上低迷、第一中央汽船は石炭運搬船の需要減少の影響があったのかもしれない。
石炭メジャーのみならず石炭価格の下落は日本企業に影響を与えそうだ。石炭を扱う三菱商事(8058)、三井物産(8031)、伊藤忠商事(8001)、住友商事(8053)などの商社株、コマツ(6301)、日立建機(6305)などの重機メーカー株、石炭輸送を行う日本郵船(9101)、商船三井(9104)、川崎汽船(9107)などの海運株には向かい風となるだろう。その一方で、石炭火力発電を行っている東京電力(9501)、中部電力(9502)、関西電力(9503)にとっては燃料価格の低迷は多少なりとも業績にはプラスだろうし、石炭火力発電の需要が高まればタービンやボイラなど発電インフラの輸出で三菱重工(7011)、三菱電機(6503)、東芝(6502)、日立製作所(6501)、IHI(7013)、富士電機(6504)にとっては追い風となりうるだろう。
(eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎)
※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。