デザインの話題「ジンクピリチオン効果」



1970年、花王株式会社はフケかゆみを止める成分である「ジンクピリチオン」が配合されたシャンプー「メリット」を新発売した。日本で初めてジンクピリチオンを配合したシャンプーであったが、その当時ほとんどの日本人がジンクピリチオンなど知らなかった。しかし、メリットのCMはあえて「ジンクピリチオン配合」とハッキリとうたい、そしてその結果、CMを見た視聴者は「何か分からないけど凄そう」と感じ、今も続くロングセラーにつながっていった。

こういった経緯をふまえ、小難しい単語によって何か分からないけど凄そうと感じてしまうことを小説家の清水義範氏が「ジンクピリチオン効果」と名付けている。

他にも
・タウリン1000ミリグラム配合
・デュラムセモリナ100%
・コエンザイムQ10
・グルコサミン
・コンドロイチン配合
・マイナスイオン
・プラズマクラスター
などがある。

このような販売促進だけでなく、研究論文のタイトルにも活用されている。ジンクピリチオン効果をもつ単語を並べることによって、その論文に興味をもつ人が増え、場合によっては研究の助成金の出やすさにもつながるようである。

同様にデザイナーやエンジニアが社内外で自らのアイデアをプレゼンテーションをする際にジンクピリチオン効果を活用することで、より多くの人の注目を集めることができる。何か分からないけど凄そうな単語を堂々と力強くアピールすることで、こちらに期待していなかった人も居眠りをしている人も興味を持って耳を傾けてくれるだろう。数多くのアイデアがある場合、まず聞こうとする姿勢を持ってもらうことは非常に重要なことである。ジンクピリチオン効果はあなたのアイデアを世に知らしめるために大いに役立つので是非とも活用してほしい。もっとも内容が伴っていなければ、そのプレゼンテーションが成功することはないが。

(Betonacox Design)

※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。