デザインの話題「CIフォント」



CI(コーポレート・アイデンティティ)とは企業の個性や独自性を意味し、文化的な活動を継続することや統一されたイメージの発信などによって構築される。デザインの世界でCIといえばロゴマークやコーポレートカラーが真っ先に挙げられるだろう。そんな中、今回はCIの意識がより高い企業が採用している「CIフォント」を取り上げる。CIフォントはその企業において統一的に使用するフォント(テキストの書式)であり、ロゴマークやコーポレートカラーに比べて浸透しやすい特徴がある。ロゴマークやコーポレートカラーの場合、普段の実務において使い所にセンスが問われ、なかなかデザイナー以外の社員が実務で扱うことが難しいが、CIフォントの場合はPCで作成する資料に簡単に盛り込むことができる。日本語対応のフォントを開発することはハードルが高いが英数だけであれば手頃な価格で依頼できる。もちろんフォントの開発をしなくても既存のフォントで自社のアイデンティティに沿うものを採用してもよいだろう。以下はCIフォントを採用している代表的な2社である。

■Volkswagen(フォルクスワーゲン)
ドイツに本社を置く自動車メーカーであり、ドイツ生まれの「Futura」というフォントをベースにしたCIフォントを使用している。Volkswagenの文字やスローガンであるDas Autoだけでなく展示会場のサインやWebページにも使用している。例えば自社の環境配慮を伝えるThinkBlue.サイト(http://thinkblue.jp)の動画には多くのCIフォントが登場する。

■Sony(ソニー)
日本に本社を置く電機メーカーであり、Macintoshの標準フォントの一つでもある「Helvetica」をベースにしたCIフォント「SSTフォント」を使用している。従来からHelveticaを多用していたが、商品の小型がに伴いフォントも小さくなり、そのまま使用するには読みづらくなったことが独自フォント開発のきっかけである。SSTフォントはHelveticaのシャープで硬質な印象を残しながら標識用に開発された高い可読性を持つ「Frutiger」のエッセンスを盛り込んだものとなっている。(http://www.sony.co.jp/SonyInfo/design/works/projects/sst-font/)

(Betonacox Design)

※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。