堅調に推移してきた米国株式市場だが、米国の中央銀行であるFRBが年内に利上げを実施するかもしれないということで株価の先行きに慎重な見方もでてきている。米国の株価がまだまだ上昇を続けるのか、それともピークにあって下落トレンドに入るのかは誰にも分からないが、判断する上での一つの材料として今回は米国のハイ・イールド債券と国債の利回りに注目してみた。
ハイ・イールド債券とは一般的に高利回りの社債を指す。社債は債券という証券の一種類であり、会社が発行する借入証書のようなものだ。会社は社債を発行して投資家から資金を調達して利息をつけて返還する。発行する会社の信用力が高いほど利回りは低くなり、支払い能力があやしくなるほど、利回りは高くなるのが一般的だ。ハイ・イールド債券は社債の中でも投資に適さないとされるものだが、その代わり利回りが相対的に高い。
一方国債は国が発行する債券なので信用力は高いが利回りは低くなる。また、債券は投資家間で売買することもできるので、債券を欲しがる投資家が多ければ価格が上昇し、発行会社や国の信用力が落ちれば手放したい投資家が多くなり価格が下落する。価格が上昇すると手取りの利回りは落ち、価格が下落すると利回りは高くなる。
図1は米国のハイ・イールド債券と10年国債の利回りの推移であるが、国債の利回りは多少上下してはいるが下落傾向にあり、5月末で2.10%であった。ハイ・イールド債券の利回りは2008年に急上昇しているが、これはリーマンショックによって発行会社の支払い能力が懸念され、投資家が社債の売却に走ったためである。その後は米国経済の回復と共に利回りは低下し、5月末時点で4.69%と過去最低水準にある。
ハイ・イールド債券と国債の利回りの差、イールドスプレッドを見ればハイ・イールド債券が国債に対して買われているのかがわかる。イールドスプレッドが拡大すればハイ・イールド債が売られている(もしくは国債が買われている)、縮小すればハイ・イールド債が買われている(もしくは国債が売られている)ということになる。図2は米国の代表的な株価指数S&P500とイールドスプレッドの推移だが、現在の水準は歴史的に見て低く、リーマンショックの前とほぼ同水準だ。
このイールドスプレッドをどう解釈するかだが、リーマンショックの前の水準と同水準で株価が高い位置にあるのはなんとなく不吉な感じがする。ハイ・イールド債券が買われるというのは、投資家が現在の国債の利回りに満足できず、しょうがなく買っているとか、会社の支払い能力を過信して買っているなど考えられるが、本来投資不適格の債券であり現在の水準は会社の実力以上に買われているといえる。リーマンショックの前にイールドスプレッドが縮小したことと重ねて見れば現在の米国の株価はバブルのピークを越えたと見ることができるかもしれない。
(eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎)
※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。