英国はパラリンピック発祥の地



2013年9月7日にブエノスアイレスで開かれた第125次IOC総会で2020年夏季オリンピックおよび第16回パラリンピック競技大会を東京都に招致することが決定となりました。

日本では、1964年(昭和39年)10月10日~24日に東京で開かれた第18回夏季オリンピックが最初でした。その大会から得たものは大きく、内需拡大はもちろんその後、高度成長期に入り、日本の経済は世界と肩を並べて、競争ができるようになったのです。

第1回の東京オリンピックのように第2回東京オリンピックも、2011年(平成23年)3月11日に起きた東日本大震災の完全復興を含めて、日本にとって、また世界にとって意義のある大会になることを祈りたいと思います。

2012年夏季ロンドンオリンピックの後、2012年8月29日から9月9日まで、夏季パラリンピック第14回大会がロンドンで開催されましたが、パラリンピックの提唱をし、発祥させた国が英国であること以外にも知られていません。

また、近代オリンピックの発祥についても、開催されるまでの様々なプロセスについてあまり知られていませんが、近代オリンピックは古代オリンピックの火が途絶えて1500年の時を経過した1892年、フランスのピエール・ド・クーベルタン男爵がソルボンヌ講堂で行った「ルネサンス・オリンピック」と題する講演の中で、初めてオリンピックの構想を明らかにしたのを機に、1896年、第1回大会がギリシアのアテネで開催されました。

その前身となったのは古代ギリシアで行われていた「オリンピア祭典競技」、いわゆる古代オリンピックですが、古代オリンピックが始まったのは紀元前9世紀ごろとされ、その開催理由はスポーツを楽しむという趣旨ではなく、なんと考古学的な研究のためというものでした。

もちろん、現代のオリンピックは世界平和を究極の目的としたスポーツの祭典です。そして、第1回アテネ大会に参加したのは欧米先進国の14ヶ国で女子禁制。選手は男子のみで280人というものでした。その条件は、2000年以上も前に開かれた古代オリンピックの域を出ることはなかったのです。

とはいうものの、実施競技は古代とは異なり、陸上、水泳、体操、レスリング、フェンシング、射撃、自転車、テニスの8競技43種目。その頃から陸上競技ではアメリカが全11種目のうち9種目において優勝という、圧倒的な強さを見せていたのです。

ちなみに2012年7月27日から8月12日までロンドンで開催されたロンドンオリンピックは、夏季オリンピックとしては第30回の記念すべき大会であり、競技種目は26競技302種目という多競技が行われました。

ところで、2012年7月のロンドン・オリンピックのマスコットのキュートな表情で多くの人の笑いを誘っていたウェンロックとマンデヴィルは皆さま、ご存知かと思いますが、そのひとつであるパラリンピックのマスコット「マンデヴィル」の名前は、ストーク・マンデヴィル・ホスピタル(Stoke Mandeville Hospital)から由来しているのです。

なぜなら、ストーク・マンデヴィル・ホスピタルはバッキンガム州のアリスバーリーにある公共病院の名前で、この地で60年ほど前の1948年7月28日(ロンドンオリンピック開会式と同日)に行われた「ストーク・マンデヴィル競技大会」(障害者による最初の国際的な競技会)、つまり、《パラリンピックの発祥の地》だからです。

また、もう一方の「ウェンロック」のは、ウェスト・ミッドランズのシュロップシャーにある町“マッチ・ウェンロック(Much Wenlock)”から命名されたものですが、実はマッチ・ウェンロックは1850年、ウィリアム・ペニー・ブルックス医師によって創始されたマッチウェンロックオリンピック(Much Wenlock Olympian Games)の発祥の地であるのですが、それは古代オリンピック以降、途絶えていた1896年に新たに始まった“近代オリンピック”のルーツとされているのです。

マッチウェンロックオリンピックとは、当時、ウィリアム・ペニー・ブルックス医師が町の住民たちのモラルや物理的な問題の解決のため、知的改善、特に労働者階級の意識と体力促進のために考え出した競技大会で、1850年2月ウェンロックの農業リーディング協会と共同してオリンピッククラスと呼ばれるクラスを設立したのです。

クラスの開設はアウトドアのレクリエーションの奨励を前面にした及び知的財産権と、工業技能の促進などを含めた内面的な向上も狙ったものでした。

そして、その内容は、約50年後に開かれた1896年のアテネでの最初の近代オリンピックのプログラムとほぼ同じであり、ブルックス博士が謳った英国オリンピック協会の憲章と国際オリンピック憲章ともほぼ同じなのです。

後に近代オリンピックが行われることになったのは、1866年に英国の国民のオリンピックとしてロンドンで開催されたことに触発され、クーベルタン男爵がオリンピック復興の構想を公表したとも伝えられるのです。

もしそうだとすれば、英国は近代オリンピックの発祥の地でもあり、それと同時にパラリンピックの提唱をし、発祥させた国でもあるのです。

英国という国の英知と世界への貢献度の大きさに、今更ながら驚き感服します。そして、底知れないその知恵と実行力に、唖然としながらも感謝です。素晴らしい国です。

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(トラベルライター、作家 市川 昭子)

※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。