温室効果ガス排出削減目標“2030年▲26%(2013年比)”は「原子力+再エネ」の合計で達成するしかない


今月7〜8日にドイツ・エルマウで開催されたG7サミットの首脳宣言では、温室効果ガス排出について、要するに次のように記述された。

原文よりごく一部を抜粋》
・・・We affirm our strong determination to adopt at the COP21 a protocol, another legal instrument or an agreed outcome with legal force under the UNFCCC applicable to all parties that is ambitious, robust, inclusive and reflects evolving national circumstances.
・・・This should enable all countries to follow a low-carbon and resilient development pathway in line with the global goal to hold the increase in global average temperature below 2 °C.
・・・as a common vision for a global goal of greenhouse gas emissions reductions we support sharing with all parties to the UNFCCC the upper end of the latest IPCC recommendation of 40 to 70 % reductions by 2050 compared to 2010 recognizing that this challenge can only be met by a global response.

要するに、「今年12月のCOP21で合意を得るべく、2050年までに2010年比でIPCC提案である40〜70%の上方で削減することを目標として、世界の平均気温の上昇を2℃未満に抑えるという目標に向かう」という話。

日本からの約束草案では、「2020年以降の削減⽬標は、2030年度に2013年度⽐▲26.0%(2005年度⽐▲25.4%)とする」(資料1)とされ、安倍首相は「2030年までに温室効果ガスを直近の排出量と比べて26%削減(2005年の排出量と比較とすると25%削減)する」と提起した。

<資料1>


この場合の「温室効果ガス」とは、「CO2、CH4、N2O、HFCs、PFCs、SF6及びNF3」で、対象分野は「エネルギー(燃料の燃焼(エネルギー産業、製造業及び建設業、運輸、業務、家庭、農林水産業、その他)、燃料からの漏出、二酸化炭素の輸送及び貯留)、工業プロセス及び製品の利用、農業、土地利用、土地利用変化及び林業(LULUCF)並びに廃棄物)」。

一般にはあまり理解されていないようだが、エネルギー起源のCO2は温室効果ガスの一部でしかない。約束草案の要綱又は政府原案を適宜参照されたい。取り急ぎ、エネルギー起源の温室効果ガス削減目標積み上げに用いられたエネルギーミックス(資料2)の達成が可能かどうかを考えると、私は以前からこのブログや他の寄稿で述べているように、概ね、次のように展望している。

(1)化石燃料(石炭・LNG・石油)については、オイルショックなど余程の事態が起こらない限り、容易に実現可能。
(2)原子力については、技術的問題ないので、政治的英断があれば実現可能。
(3)再エネ(水力・地熱・バイオマス・風力・太陽光)については、技術的な問題や立地上の隘路が個別にあるので、政治的判断がどうであろうと、目標にはとても届かず実現困難。

<資料2>


安倍首相による上述の提起では「我々は、2030年までに35%のエネルギー効率の改善を目指す。これは、太陽光で約7倍、風力や地熱で約4倍の増加も含め、再生可能エネルギーの大幅な活用を通して可能だと信じている」としている。このうち、「太陽光で約7倍、風力や地熱で約4倍の増加」とは、エネルギーミックスにおける比率のことを指していると思われる。

再エネについて、2030年度での買取費用は、3.72兆円~4.04兆円の範囲において、全体で2,366~2,515億kWhで、原発を代替する地熱・水力・バイオマスの買取費用は約1.0兆円~約1.3兆円、火力を代替する風力・太陽光の買取費用は約2.7兆円以下。

nonCO2電源構成ということであれば、結局、原子力と再エネの比率がどうなるかがポイントとなる。日本の国内的には、脱原子力(というか嫌原子力)かつ再エネ礼賛の空気がまだまだあるようで、“原子力比率を低下させろ!再エネ比率を向上させろ!”的なことが相変わらず一部マスコミなどが叫ぶかもしれない。

しかし、地球規模での国際的な視点からは、最終的なCO2排出量が問題となるので、国内の個別の「原子力比率」と「再エネ比率」の多寡は問題にならず、総合的な「原子力+再エネ」比率を高めることを目指せば良いとなる。

(NPO法人社会保障経済研究所代表 石川 和男 Twitter@kazuo_ishikawa

※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。 本稿は筆者の個人的な見解です。