東京メトロ東西線神楽坂駅から徒歩数分のところに建っている「SHARE yaraicho」は篠原 聡子(日本女子大学教授/(株)空間研究所主宰)と内村 綾乃(A studio主宰)による作品で、2014年日本建築学会作品賞をシェアハウスとして初めて受賞している。
ここ数年でよく耳にするようになったシェアハウスだが、対する印象は人それぞれだろう。金銭的に余裕がない人が利用するというイメージを持つ人も少なくはないだろうが、今では原宿のTHE SHAREや巣鴨のRYOZAN PARKなど家賃が決して安くはないものもあり、居住者の目的はビジネスや文化交流と様々である。ひつじ不動産(http://www.hituji.jp)のレポートによると、もともと利用者は正社員よりも非正規雇用の方が多かったが2010年には逆転し今では正規雇用の割合の方が大きくなっている。金銭的に「仕方なく」ではなく、多くの人が「シェア」を楽しむために利用していると考えられる。
実際にシェアハウスでは「シェア」を楽しむための仕掛けがされている。SHARE yaraichoでは各階に共用部分を設けて住民が顔をあわせる機会を増やしたり、THE SHAREでは壁にシェアマップという近隣マップを備え利用者が店舗などの情報を記載し文字通りシェアできるようになっている。当然、楽しむためにはルールがあり、それぞれのシェアハウスで利用者たちの創意工夫がある。職場に円滑なコミュニケーションを要するのであれば、「住む」という究極のコミュニケーションを実践しているシェアハウスを参考に空間をデザインしたりツールをデザインしてみるとよいかもしれない。
(Betonacox Design)
※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。