「2014年の世界の再エネ設備増分は過去最高で、米国の全原発158基分に匹敵」という変な国連機関発表


UNEP(国連環境計画)は昨日、次のようなことを概要とする発表を行った。

Driven by solar and wind, world investments reverse 2-year dip, brush aside challenge from sharply lower oil price; 103GW capacity added in 2014 is roughly that of all US nuclear plants

・・・Global investments in renewable energy rebounded strongly last year, registering a solid 17% increase after two years of declines and brushing aside the challenge from sharply lower crude oil prices.
・・・Major expansion of solar installations in China and Japan and record investments in offshore wind projects in Europe helped propel global 2014 investments to $270 billion, a 17% surge from the 2013 figure of $232 billion.
・・・The 103GW of capacity added by renewables last year equals the energy generating capacity of all 158 nuclear power plant reactors in the USA.

要するに、次のようなことである。

1)2014年に全世界の大型水力開発を含む再生可能エネルギー投資は、前年比17%増の2702億ドルで、ここ3年間で最高額。(これまでの推移は下の資料の通り。)

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2)これは、中国と日本での太陽光発電の増設や、欧州での洋上風力開発計画への投資が大きく寄与したことによる。

3)この増設分は103GWで、米国の原子炉158基分に匹敵する。

この発表において変なのは、再エネ増設103GWが米国の原発158基分であるが如く書いていることや、日本の“太陽光バブル”を前向きに評価するような表現をしていることだ。

日本のマスコミ報道にも言えることだが、再エネ発電設備を“原発◯基”と書くのは適切ではない。水力や地熱といった『(ベースロード電源になり得る)安定的な再エネ』ならまだしも、ここでの再エネとは太陽光や風力といった『(ベースロード電源にはなり得ない)不安定な再エネ』のことだからだ。

更に、日本での太陽光発電設備の増設が世界の再エネ投資増に寄与したと書かれているが、これも甚だ不適切。確かに投資は激増したが、周知の通り、それは電力各社との接続保留問題を引き起こすほどの失策の結果である。

UNEPという国連機関でさえ、このような大きな誤解を与えることを発している。日本の“太陽光バブル”に関しては世界の関心が集まるほどのことではないだろうが、再エネ設備増分が米国の原発158基分もあるというのは、持つべきではない希望を持ってしまう人を増やす可能性がある。

エイプリルフールというわけでは全くないだろうが、これは、UNEP(国連環境計画)が世界に向けて大きな誤解を与える発表をしているという話。

(NPO法人社会保障経済研究所代表 石川 和男 Twitter@kazuo_ishikawa

※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。 本稿は筆者の個人的な見解です。