米国利上げの影響は?


米国の利上げの開始時期がいつになるのか?これが今年の世界経済の最大の関心事になっている。そもそも利上げとは中央銀行が政策金利を上げることだが、利上げは国債金利や企業の借入金利に影響するため、世界最大の経済規模を誇る米国の利上げは他人事ではない。将来を考えるには過去を顧みる、ということで米国の利上げが米国の株式市場にどのような影響を及ぼしてきたのか振り返った。

このチャートは米国の代表的な株価指数であるS&P500指数と米国の政策金利としてFF(フェデラル・ファンド)金利誘導目標の1971年からのチャートだ。さらに過去の利上げ局面を薄い赤、利下げ局面を薄い青、変更がない時期を薄い緑で示している。利上げがどれほどのインパクトがあったのかをこれらの局面ごとに株価指数の収益率を調べることにした。なお、株価指数の収益率として、物価変動分を差し引いた物価調整後の株価指数を用いた。1970年代と現在のモノの価格を比べるのに物価を考慮しないとフェアでないためだ。

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利上げは経済にマイナスというのが経済の教科書的には定石だ。チャートの全期間、1971年1月から2015年2月までの物価調整後のS&P500指数の年率平均収益率は、利上げ局面で-0.67%、利下げ局面で+4.18%、変化がない時期で+7.72%であった。

しかし、チャートを見ると1991年以降の利上げ局面では株価が上がって、むしろ利下げ局面で株価が下がっているように見える。そこで1991年以降の物価調整後のS&P500指数の年率平均収益率を計算してみると、利上げ局面で+1.84%、利下げ局面で-1.12%、変化がない時期で+8.06%であった。近年は景気動向を見ながら政策金利を決めているためか、好景気のうちに利上げし、景気が悪化してきたら利下げをして景気浮揚を図る、ということを実施してきたのだろう。

以上のことから1991年以降の動向を踏まえると、米国の中央銀行は株価が低迷する不況時に利上げをするとは考えにくいので、好景気のうちに利上げをしたいと考えるだろう。この前提に立てば利上げの時期は6月になることが予想される。仮に6月に利上げがあっても株価はしばらく堅調に推移するかもしれない。ただし、利上げが終了した段階で株価の大幅下落があったことには注意が必要だ。

(eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎)

※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。