2015/03/23

500年余の歴史を誇るインナー・テンプル Inner Temple in London


《「ダ・ヴィンチ・コード」など数々の小説や映画の舞台にもなった現英国女王エリザベス2世の夫フィリップ・エディンバラ公、アン王女など王室関係者多数が、籍を置くインナー・テンプル》

ロンドン中心部シティの一角に建つここは、500年以上という長い歴史を誇るインナー・テンプル法曹院(The Honourable Society of the Inner Temple)です。

法廷弁護士の育成・認定を行う非営利の協会組織“法曹院”はロンドンに4つあり、インナー・テンプルはその中のひとつですが、英国ではイングランドとウェールズのすべての法廷弁護士および裁判官は4つの法曹院のいずれかに所属することが法律によって義務づけられています。

ロンドンの法曹院はミドル・テンプル法曹院(Middle Temple)、グレイ法曹院(Gray's Inn)、インナー・テンプル法曹院(Inner Temple)そして、リンカーン法曹院(Lincoln's Inn)の4つのことを指します。

《4つのインの創立時期》

“リンカーンズ法曹院”は、創建の確かな年代は判明していませんが、文献によれば1442年から現在の場所と同じ場所に建っていることは確かで、創立の時期はそれ以前と考えられます。

“インナー・テンプル”が記録に登場するのは1460年。また、国権に正式にステータスを認められたのが1608年。でも、インナー・テンプルも13世紀前半頃までその歴史を遡れると考えています。

“グレイ法曹院”記録では1569年としていますが、1388年までその歴史を遡れると考えられています。

“ミドル・テンプル”が記録に登場するのは1501年です。でも、数々の補足的な資料からすると13世紀前半頃までその歴史を遡れると考えられています。

いずれの法曹院も法廷弁護士の養成・認定に関する独占的な権限を持ちますが、このインナー・テンプルはシティのエリア内に建っているもののシティとは関係なく、“Liberty”と呼ばれ、自治体として単独にその地位を持っていることが特徴です。

院に籍を置く人々の中には、インド共和国独立の父マハトマ・ガンディーはじめ、現英国女王エリザベス2世の夫フィリップ・エディンバラ公、アン王女、コロンビア大学初代学長であり文学者、英語辞典の編纂者であるサミュエル・ジョンソンなどの他、イングランド国王のジェームズ2世、英国国王で現エリザベス女王の父であるジョージ6世など、英国だけでなく世界中の多くの様々な分野で活躍していた著名人が名を連ねています。

また、ここはテンプル騎士団が設けた“The Temple”(テンプル)があったことで、法曹院の名称の由来としていますが、それはこの敷地内に12世紀にテンプル騎士団により建設された宿泊施設や食堂、国王が滞在するための建物、貯蔵庫、厩舎、そして、今も現存するテンプル教会などを建立し、一つの世界を構築したからでした。

このテンプルとテンプル騎士団の権威の大きさは、内外にに知られるところですが、記録には「1185年2月10日、イングランド国王ヘンリー2世とともにテンプルの開所式を執り行った」とあります。また、イングランドの王が深く関わっていることで、その後は王室関係者たちの宿舎となり、1215年にはイングランド王ジョンの滞在中に、男爵などの貴族から国王の権限の制限と貴族としての彼らの権利の拡大を狙った公文がこの院で制作され、滞在中の王の認可を求めた、という事件も起こっているのです。

そして、その時の公文が1215年に制定されたマグナ・カルタにつながるのですが、その調印の場にはテンプル騎士団の代表も立ち会っていたのです。

当時、テンプル騎士団はいかに貴族との太いつながりを持っていたのか、この件だけでもうかがい知ることができます。

現在、敷地内には7万冊の司法関係書籍の所蔵を誇る図書館はじめ、多くの宿泊施設、ダイニング、チャペル教会、庭園などが設けられていますが、1680年に建立された“King's Bench Walk”の1棟を除くインナー・テンプル内の建築物の大半が、1941年のナチス・ドイツによるロンドン空襲により大きな被害を受けました。

ですから、現在のインナー・テンプルの建物の大半は、第二次世界大戦後に大規模な改修、または完全な建て替えがなされています。

でも、中世の趣きあるヴィクトリア朝での再建ですから、シックで情緒にあふれた佇まいを見せることから、「ダ・ヴィンチ・コード」など数々の小説や映画の舞台にもなって、今も人々の注目を浴びているのです。

敷地は誰でも入ることができます。ロンドン訪問の折り、近くまで来ましたら、ヴィクトリア朝時代の優雅でクラシカルな情景の中に、一時、身を託して下さい。

(トラベルライター、作家 市川 昭子)

※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。
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