2015/03/25

自然エネルギー普及の大きな壁 〜 買取総額最大2.7兆円に加えて、送電線増強費用11.2兆円

今、政府では、2030年の電源構成を検討している。その中で最も注目を集めているのが、太陽光や風力など“自然エネルギー(=再生可能エネルギー)”の導入目標をどの程度に設定するかということ。その際に問題となるのが、実は再エネ普及のための送配電設備になっていないという実状だ。

日本に住んでいると、全国どこにでも送配電網で結ばれているので、何を今さら問題にするのか、と疑問を抱く人も少ないだろう。日本の送配電設備は、大停電を起こさず、高品質の電気を需要家に送ることを主眼として建設されてきた。北海道から沖縄までの電力10社が、原子力や火力による『大規模な発電所』で発電した電気を需要家に送るための送配電設備である。いわば、電力会社から我々一般の需要家に「一方通行」で電気を送るためのもの。

しかし、再エネが普及し、多数の再エネ発電事業者が売電するようになると、状況は一変する。今まで需要家でしかなかった人々が、再エネ発電事業者という“小規模な発電所”として登場することになる。そういう再エネ発電事業者が多数参入してくると、従来のような「一方通行」型の送配電設備では適応できなくなる。

また、特に 風力発電の適地は北海道と東北の一部(北緯40度以上)に偏在している〔添付の図を参照〕のだが、これらの地域にはもともと電力需要は少なく送電容量が小さい。だから、多数の風力発電所を開発しても、消費地まで送電するための送配電系統が脆弱だということだ。

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(出所:資源エネルギー庁)

では、そうした問題を解決するにはどうすべきか?

2012年4月に経済産業省の研究会が出した報告書では、風況の好い北海道で7000億円と東北地方で4700億円で計1兆1700億円の系統増強費用と、50Hz/60Hzに分かれている東西の周波数を統一する費用として10兆円が必要との試算を提示した。しかし、こうした設備投資に係る費用負担については、支援策の意義を示してはいるものの、実現までのプロセスや手段に関しては電力会社どうしの調整に委ねることを基本とする旨で止めている。

すなわち、電力システム改革の仕上げが2020年に見込まれ、競争激化が予想される中、送電ネットワークの強化という再生可能エネ普及の事実上のボトルネックをどうするのか、固定価格買取制度だけでも最大で年間2.7兆円という莫大な国民負担に加えて、送配電網の増強コストを今後どうするのか、誰が負担するのか、地域間の負担の公平化はどうするのか、など肝心なことについて具体策が示されていない。

再エネ電気が円滑に通ることのできる送配電網がなければ、再エネ発電事業は推進されようがなく、再エネは普及しない。その送配電網を建設するのに必要な費用を誰が負担すべきか、きちんと決める必要がある。しかし、それは決められないだろう。だから、来月のGW連休前には決めなければならない再エネ数値目標は、臨場感のない空理空論にならざるを得ない。

(NPO法人社会保障経済研究所代表 石川 和男 Twitter@kazuo_ishikawa

※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。 本稿は筆者の個人的な見解です。
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