昨年は公的機関、特にGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が日本株を買い増しに動くという話が日本株市場を騒がせたが、このような資金規模が大きく、投資行動が相場に影響を及ぼす投資家のことを最近の報道では“クジラ”と呼ぶようだ。“クジラ”の代表格は冒頭のGPIFだが、最近別の“クジラ”が注目されている。かんぽ生命だ。
おなじみのかんぽ生命は日本郵政グループの生命保険会社であるが、彼らも資金運用を行っている。最近かんぽ生命が日本株を買い増している、という報道を目にすることが多いので本当にそうなのか調べてみた。
このグラフはかんぽ生命が保有する金銭の信託の推移を見たものだ。かんぽ生命は直接的に公社債、外国証券、預金等に投資している一方で金銭の信託にも投資している。金銭の信託とは信託銀行や外部の投資顧問会社に運用を委託して間接的に投資するものだ。かんぽ生命が保有している金銭の信託には国内株式、外国株式、外国債券という区分があり、これを見れば日本株への投資を増やしているのかが分かるというわけだ。また、グラフは時価ではなく帳簿価額を使った。時価を用いると価格変動で増えたのか投資活動で増えたのか分からないためだ。
金銭の信託を通じた日本株への投資は2014年に帳簿価額ベースで2,192億円増えている。外国株式と外国債券は1,000億円強だ(外国債券は2013年12月末から記載あり)。これは2014年9月末までのデータなので残念ながら直近本当に日本株への投資を増やしているのかはここからは分からなかった。しかし、傾向として増加傾向にはあり、報道のように今年に入ってから投資金額を増やしていることがあってもおかしくはない。
“クジラ”が好む株式は買い支えによって底堅い値動きをするかもしれない。 “クジラ”と呼ばれる機関投資家の運用は株価指数に連動させるのが主流なので、買い支えがあることを前提にすれば、機関投資家が好むTOPIX(東証株価指数)の構成上位銘柄やJPX日経400の構成上位銘柄が買われるだろう。
(eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎)
※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。