2015/02/25

再エネ先進国のドイツは「固定価格買取制度」から「競争入札制度」へ移行開始 ~ それを伝える新聞と伝えない新聞

日本の国会も政府もマスコミも、日本人ではなくドイツ人に左右される。

今をときめく“再生可能エネルギー(自然エネルギー)”に関する政策を巡る動きを見ていると、そうとしか思えない。そして、失敗した。更に、ドイツは政策転換を進めつつある。

自分たちにとって都合の悪いことを発したり報じたりしないのは世の常だが、再エネに関しても同様だ。今月上旬、日本記者クラブ取材団が欧州のエネルギー政策を取材するため、スウェーデン、アイスランド、ドイツを訪れたらしい。それに関して報じられた中央紙・地方紙の報道内容が、新聞社によってけっこう違う。

そこがけっこう面白いので、以下に抜粋しておく。ここまで違う内容を報じるかという話・・・。

◎2月12日 愛媛新聞「再エネの普及順調 脱原発ドイツの事務次官 「競争力ある発電可能」」
・ドイツのバーケ経済エネルギー次官は、再エネについて「すでに技術やコストの問題ではない。新型の設備では競争力のある発電ができる」と。
・日本でも導入している固定価格買取制度などは「過去の政策だ」とし、今後は「安い風力や太陽光に絞って促進し、競争原理に基づく電力システムを構築する」と、送電網の整備拡充などを課題に挙げた。
・バーケ次官は、日本の原発問題やアジア各国の新増設について「それぞれが決めるべきこと」と。

◎2月16日 毎日新聞「風知草:脱原発 ドイツは不退転」
・左派系紙ターゲスツァイトゥングの経済環境部長
「再エネが増えて大企業の電気代は前より安くなっている。一般家庭の支出で電気代の比重は小さい。電気代が上がる上がるというのは、エネルギー転換反対の立場の人の決まり文句」
「貧困はエネルギー転換のせいではない。バス代値上げで公共輸送機関の仕組みが悪いという議論にはならんでしょう」
「エネルギー転換に携わる者には『誰もやったことがないけど、必要なことはやらねば』という理解がある。ドイツは豊かな国で技術力もあります。だからこそ他国に先んじて変わらなければならぬという義務感がある。電気代を論じる前に、そういうコンセンサスがあることを理解する必要がある」
・ドイツは風力、バイオマス発電が伸びているが、送電線拡充、バックアップの火力発電に課題。

◎ 2月20日 新潟日報「将来は再生エネ100% スウェーデン脱原発へ」
・人口約974万人のスウェーデンには原発が10基ある。国内電力量の38%を占めており、主要電源の一つ。そんな国のエネルギー責任者から、意外な言葉を聞いた。
「私たち政府は、スウェーデンの電力が再エネ100%になるよう目指している」

◎2月22日 産経新聞「再生エネ優遇、独曲がり角 電気代、仏の倍/「競争」導入に保護派反発」
・経済エネルギー省のバーケ次官
「再エネによる発電比率は26%に達した。いまや最大の電力供給源だ」
「技術開発のための助成は終わった」
「これからは競争原理に基づく助成になる」
・昨夏の改革で、再エネ事業者を入札で決める仕組みを取り入れた。できるだけ買取額を抑える狙い。
・ドイツの電気料金は「フランスの倍」(産業界関係者)。
・環境保護団体グリーンピース系グリーンピースエナジー広報担当者は、入札は「体力がある大企業が有利だ。中小事業者は生き残 れなくなる」と危惧。
・北部は風力開発が進み、豊富な再エネ電力。産業が集積する南部は原発が主要電源。北部の電気を南部に送って使いたいが、南北を結ぶ高圧送電線の貧弱さがネック。
・送電網整備は「(脱原発と再エネ拡大の)エネルギー大転換のかぎ」(バーケ氏)。
・送電網整備ははかどっておらず、高圧線鉄塔の敷地探しが進まないのが要因。候補地の住民は「自分の庭先はごめんだ」という反発が強く、地元の環境保護派が同調するケースも多い。

以上4つの記事を見ると、明らかに論調が異なる。同じ取材団にもかかわらず、である。

愛媛新聞と産経新聞は、ドイツ政府が固定価格買取制度(FIT)を改革し、再エネ事業に競争原理を導入するための制度(FIP)について言及している。しかし、毎日新聞と新潟日報は、ドイツの固定価格買取制度の改革に関しては一切触れていない。

ドイツでは近年、太陽光発電の急増に伴う需要家負担増を契機として、一定規模以上の再エネ発電設備については卸市場での販売価格に割増(プレミアム)を付与するFIPが一部義務化された。日本にしてみても、これは再エネ政策としての大転換に映るだろう。

ドイツにおけるこうした再エネ制度改革の動きは周知の事実。再エネ政策に関してドイツに感化されまくっている日本の国会・政府・マスコミは、愛媛新聞と産経新聞の論調に今後傾斜していくと思われる。

今はまだ政府の審議会資料でもそれほど大きな扱いにはなっていないが、そのうち主要論点になっていくであろう。何かしなければならない強迫観念もある中で、当面、FIP以外の次善策が見当たらないからだ。

では最善策は何か?

日本の場合、それは、再エネ賦課金を明示しながらの総括原価方式に基づく『修正RPS法』(RPS:「電力会社に一定割合で再エネ導入を義務付ける制度」)への回帰であろう。

(NPO法人社会保障経済研究所代表 石川 和男 Twitter@kazuo_ishikawa

※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。 本稿は筆者の個人的な見解です。
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