脱原発の最右翼としてマスコミ上でも常に大人気の『地熱』 ―― 経済産業省が先月30日に発表したところ(※)では、20年ぶりの大規模地熱開発に対して経産省がJOGMEC(独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構)を通じて行う支援が決まったとのこと。湯沢地熱株式会社による秋田県湯沢市での地熱開発案件で、発電規模は4.2万kW。1万kW以上の大型地熱開発としては、平成8年に運転開始した滝上発電所(大分県)以来で20年ぶり。
※ http://www.meti.go.jp/press/2014/01/20150130001/20150130001.pdf
こう書くと、政府がもっと地熱開発に注力していけば脱原発がすぐに実現するはずだ!と思う人も少なくないかもしれない。事実、経産省調査によると日本の地熱賦存量は「世界第3位の地熱資源量(2340万kw)」で、これを原発23基分に相当すると報じる大手マスコミもいるくらい期待感は大きい。
しかし、事はそう簡単には進まない。原子力や石炭火力では100万kW級の発電規模のものも多いが、地熱の場合には1カ所平均の発電規模は、事業用で3.3万kW、自家用で0.3万kWでしかない(資料1)。今回の支援の対象となった湯沢地熱株式会社の話が大規模地熱開発と言われるのは、こうした理由からだ。
<資料1>
(出所:経済産業省)
更に、今回の支援スキームである「債務保証」(資料2)。一見すると、どこにでもありそうな支援スキームだが、ここに大きな苦労があったはずだ。政府支援スキームと言っても、無償で支援してくれるほど甘くはない。
<資料2>
(出所:経済産業省)
要は、JOGMECと湯沢地熱の保証契約を巡って、JOGMECが大損をしないことに関する“何らか確実なもの”が交わされたのであろう。そうでなければ、地熱開発への民間融資に対する政府の債務保証が乱発されてしまう。
事程左様に、地熱開発も、地熱開発支援も、非常に難しいという話。地熱は、原子力や石炭火力に代替するものとしてではなく、国産資源の活用によってエネルギー自給率を少しでも上げるためのものとして、地道に取り組んでいくべきだ。地熱開発には、長い永ぁーい時間がかかるのだ。
(NPO法人社会保障経済研究所代表 石川 和男 Twitter@kazuo_ishikawa)
※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。 本稿は筆者の個人的な見解です。